第19話 絶望の朝

オーディションひと月前くらいの時の事だった。おじいちゃんが、亡くなった。どうやら夜の間に亡くなっていたらしい。


いつも僕より先に起きて朝ご飯を作って待っているのに、どうにもその日の朝は朝起きても誰もいなかった。


おじいちゃんのいる寝室に行って、声を掛けながら、身体をゆすって起こそうとしたら、おじいちゃんの身体はもうすでに冷たかった。


一瞬僕は理解が追いつかなかった。前の日まで、一緒にご飯を食べて一緒に笑って、一緒に雑談を楽しくしていたのに。


後で聞いた話なんだけれど、おじいちゃんは実は末期がんの患者だったらしい。 どうやら、全身に転移していて、もはや手術の施しようもなかったらしい。


おじいちゃんは、頑張る僕の邪魔をするまいと、ずっと隠し続けていたらしい。


余りに突然すぎる別れだった。 僕は泣いた。三日も四日もずっと、喉を潰すほど、泣いて、泣いて、泣き続けた。今まで流してなかった何年分もの涙を全部出してしまうかのように。その後、通夜、告別式と経ても、僕は茫然自失としていた。


そして、霊柩車に乗って一緒に火葬場に行き、真っ白なお骨になったおじいちゃんの姿を見て、私はようやくおじいちゃんがこの世からいなくなったという事実を受け入れ、いや、現実として突きつけられた気がした。


もう、この世におじいちゃんはいない。僕に夢を与えてくれた存在はこの世からいなくなってしまった。 その現実に押しつぶされていた。


そして、悪いこととは重なるもので、この直後に悲劇はまた訪れた。


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