第12話 奪われ、そして取り残され。
「えっ・・・・・・これが・・・・・・わた・・・・し・・・・・?」
私が密かに自慢していた栗色の髪は、雪のように真っ白に染まり、肌も同じように青白くなっていた。 私にとってこの髪は大好きな母から受け継いだ本当に宝物のようなものだったから、本当に愕然としてしまったの・・・・。
それに変わったのは髪だけじゃないってことに、この後気づかされたの。
お風呂の準備をして入ろうと服を脱いだら、背中に着けた覚えのない痣がついてたり、たまにその痣が強烈に痛み始めたり、身体が昔ほど力が無くなってしまったり。
そして、何よりじわじわと私を恐怖の渦へと突き落としたのが、何年たっても老いることはなく、そして死ぬこともできないという事。
最初は年月を経ても他の人よりも少し幼いだけなのかと思っていたら、十年、二十年経って、親しい友達、たまに心配してきてくれてた親戚たち、そして大好きな私の家族たちが、どんどん年齢を重ねて変わっていってるのに、私一人は取り残されたまま。 私の事を分かってくれてた人たちは、どんどん旅立っていってるのに、私一人はそのまま。
最初はなんでこんなことになったのかわからなかったけど、今思えばこれもきっと、あの血の毒の作用だったんだと思う。
そして、年月を追うごとに徐々にこの神社に来ていた人も減っていって、遂に参拝してくれる人もいなくなっていった。
わかってくれる人はいなくなっていって、いつしか私は人と交流することもままならなくなり、そして大好きな家族、お父さん、お母さん、そして姉弟はみんなこの世からいなくなっちゃって、前はたまに降りてた山の下の街にも行かなくなったし、気づけば何百年もの間、ずっと一人ぼっちになったの。
気付けば山を荒らしまわっていた妖怪たちも、森林の開発が進んでいく中、急速にいなくなっていき、とうとう私のこの病の元になった妖怪もここからは姿を消してしまっていた。
そしてある時、衝動的に自分の腹をかき切ろうとも遂にその命は途絶えなかった。
もう私は何もできない。死ぬことさえままならない。
生きていても誰かのためになる事も出来なければ、ややもすれば邪魔になることしか出来ない。 まるで川をずっと漂流し続ける死体みたいなもの。ただただずっと流れ続けて、何かの流れをせき止めてるだけか、腐敗しながら長い川を、海を、この世を、ずっと漂っているだけ。
ずっと続く虚無に永遠に耐えながら生きていかなきゃいけない、その事実に気付いた時、私は本当に恐怖に触れた気がした。
・・・・でも、それでも、これでただ生きる屍になるのは本当に嫌だった。 だから私は、せめて自分なりに、生きている以上は大事なものを守っていきたくて、私のいる場所、森之宮神社をとにかくずっと守り続けることに決めたの。
大好きな家族と、幸せな時間を過ごした場所。私がずっと育ってきた大切な場所。
複雑な感情が今でも浮かぶけど、でも大好きな思い出を守っていくために、私はあの場所を大事に守ってくことにしたの。
で、気づいたらもうとんでもない年月が過ぎて、こうなってたってわけ。
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