第16話 騒動の結末は?

 私は今、ヴィクターと共になぜか王宮の応接間に留め置かれている。


 表向きは今日の婚約破棄から始まった一連の騒動の当事者として呼ばれたのだけど、どうもそれだけではなかったみたいだ。


 先ほどから……。




 あれはクラウン王子みずから『ジドリー毒殺事件』を解決しようとしておこなったパフォーマンスだったと。


 そういう事になるからと。




 目の前の王妃殿下から時間をかけてされていたところだ。




 これってもしかして、今までのことが全てなかったことにされるのかしら?




 嫌悪感と反発心で爆発しそうな私を、ヴィクターが隣で押さえてくれている。




「──ですから、今後は立太子したクラウンと共に、婚約者であるあなたもおおやけの席に出ることになります」


「しかし殿下はルーザリア嬢と婚約すると仰られていたと思いますが……?」


「いいえ。あれは認められません。ただの演技だと言ったでしょう? 王族と侯爵家の取り決めをクラウンの一存で変えられる訳がありません。分かりますね?」




 必死の形相で否定されてしまった。


 そんなにこの婚約を壊したくないのなら、もっと前に息子の言動を何とかするべきだったんじゃないかと思うが、まさか王家相手にそんなことは言えない。


 でも『はい』とは絶対言いたくなかった私は、婚約の件は聞き流し話題を変えることにした。




「あの。それよりも、ジドリーとチャボットの件は……?」


「それは今、もう一度きちんと調べ直しているわ。だからもうしばらくお待ちなさい」


「そうですか……」




 ジドリーは毒殺で間違いなさそうだけど、チャボットの誤飲が本当に事故だったのかはすごく気になっている。


 そんな私の心情を分かってか、隣に座っているヴィクターから心配そうな眼差しをいただいた。


 気持ちを切り替えるためにも、私は先ほどの騒ぎの首謀者かもしれない人物について聞く事にする。




「それなら、フール……でしたか? あの方、殿下の側近ではありませんよね? いったい何者なのでしょう?」


「やはり貴女あなたは気が付いていましたか」




 先ほどまでとは打って変わって機嫌良くなった王妃殿下。


 たぶん私のお妃教育は王妃殿下の監督下でおこなわれていたため、私の出来は彼女の功績となるから鼻が高いのだ。




「あの者は間者かんじゃでしょう。どこの手の者かまではまだ分からないけど、クラウンを陥れる目的で近付いた事は間違いないでしょうね」


「それで彼はどうなったのですか?」


「取り調べが終われば当然処分されるはずですが、当面は生き証人として拘束することになるわ」




 まぁ妥当だろう。


 これで即死刑とかだったら一応止めようとしていたので、そこは安心した。


 このまま彼だけを切るなら、きっと黒幕は分からず終いになってしまうから……。


 さて、ここからが本題なのだけど……。


 果たして答えてくれる……いや、最終的には認めてくれるだろうか?

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