異世界妄想癖のある俺が、異世界転生の為に屋上で覚悟決めたら美少女天使に襲われて始まるよくわからん物語

たかひろ

いかれた出会い

第1話 皇二、異世界に行く?視点、皇二

 揺れる馬車窓から見える広大な草原。

少し上を見ると、澄んだ青空がどこまでも広がっていた。

雲はほとんどないが、トカゲのような鳥があちらこちらで飛び回っている。


「どうしたんですか、ジェルベール様?」


 うわっ!

気づかなかったけど、俺の太ももの上になんかいる!

なんかっていうか、猫耳の生えた巨乳美少女!

驚いた拍子に頭を馬車の屋根にぶつける。


「ご主人、お怪我は?」


 俺が頭をさすっていると、今度は隣に首輪をつけた美少女が心配そうに近づいて来た。

こ、これはまさか異世界転生したってやつか。

状況を把握し始め、若干鼻の下が伸びたタイミングだった。

馬が悲鳴を上げ、馬車が急停止する。

窓から身を乗り出して前を見ると、女の子がオークに囲まれていた。


「危険ですご主人!」


 俺は2人に無言で心配ないとジェスチャーし、彼女の元へ駆けつける。


「あ、あなたは!?」


 怯える女の子が声をかけてきた。

ジェルベールという名前、最近読んだチート異世界転生もので聞いたことがある。

たしかあの作品のチート能力は......。

俺は取り囲んでいたオークたちに目を向け、指パッチンを複数回行った。

ただ指を鳴らすのもつまらない。

ダンスなんてしたことがないが、適当にリズムをとってパッチンとやった。

鳴らすごとに爆発するオークを見ながら思った。

ノリでダンスなんてするもんじゃないと。

我ながら腹芸とどっちが恥ずかしくないかと考え、いい勝負なんじゃないかと頬を赤くする。


「助けてくれてありがとうございます!」


 しかし、穴があったら入りたいと思うほどに恥ずかしかった行動を誰も笑うことはない。

むしろ、みんな目をキラキラとさせ俺の行動を賞賛してくれている。

あぁ、なんて純粋で心が清らかなんだろう。


「いや、俺はただ......」


 いやぁ、たまらないね。

異世界転生してチート能力付与!

おまけにハーレム状態でスタートし、さらにまた女の子増えそうな予感!

俺の人生にこんなバラ色が待っていたとは思いもしなかった。

だって、昨日までは夜遅くまで受験勉強をしていたからな。

いやぁ、地獄だったなぁ。

毎日毎日机に向かう苦行をさせられ、それを乗り越えて待っている未来。

それはなんと、某有名な男子校!

あり得ないだろ!

人生で一度しかない青春の3年間を同じ猿どもと過ごせって言うのかよ!

あ、何1人でキレ散らかしてるんだろ俺。

落ち着こう、もうそんな日常は来ない。

あんな辛い日々とはお別れし、今はこうしてかわいい女の子たちと......。


「って、あれ? 猫耳ちゃん? 首輪ちゃん? どこだよ!」


 女の子たちがいない!

というか、視界がぐちゃぐちゃと揺らいで何だかおかしい。

ピピピというけたたましい音が徐々に鮮明に脳に響く。

これはもしかして......夢?

いや、夢であってたまるか!

指パッチン!

反応なし、くそぉ!

なんで、なんでこんな仕打ちしてくれる。

またあの地獄に戻れっていうのか?


やめてくれよ!


 大声でそう叫ぶと同時、俺は見覚えのある部屋で上体を起こした。

カレンダーを見ると、今日の日付に三者面談という文字が刻まれていた。

そして、眠気眼を起こすためにベランダへ行く。

なんで同じぐらい澄んだ青なのにワクワクしないんだろうなぁ。

あ、そっか。

トカゲが飛んでないからか。

とりあえず、学校行かないとな。

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