第17話
「……」
彩は返す言葉が見つからなかった。
そんな彩を見て、悠人は
「あっ、湿っぽい話になって。こんな話したの彩ちゃんだけだよ」と笑いながら
「でね、しばらくチンタラしてたんだけど、ある日、何やってんだ俺、こんな自分は嫌だって思うようになって。それで自分を変えたい、変わりたいと思って高校に入ってからは俺なりに努力して頑張ってるってわけ。亮から放送部に一緒に入ろうって誘われて、亮とは小学校の時からずっと友達でね、亮は落ち込んでた時もずっと心配してくれて。いいやつなんだよ。最初、放送部なんて全然興味なかったけど入ってみたら、お昼の放送の企画を練ったり、番組創りが面白くなって、今は超楽しいよ」
「事故してなかったら放送部なんて全く選択肢になかったから、こうして彩ちゃんと一緒に帰るなんてなかったと思うから俺、超ラッキーだぜ」とお道化てみせた。
彩はやっと笑ってくれて
「ユート先輩、調子がいいんだから」
と言ってくれたので二人で大笑いになった。
そうこうしているうちに分かれ道の大丸スーパーに辿り着いた。
悠人はもう少し彩と話していたかったが、ぐっとこらえて
「じゃあここで、また明日」と言った。
「はい、また明日」と彩も笑顔を向けて言った。
悠人は何食わぬ顔で自転車に乗って後ろも振り向かず走り去ったが、後ろ髪惹かれる思いだった。
彩の笑顔がいつまでも脳裏に焼き付いて離れなかった。
(俺、ひょっとして彩ちゃんのこと本気で好きになってしまったのか……)
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