第15話

 9月15日に行われた地区大会。

悠人達、2、3年生が、手がけた『創作ラジオドラマ部門』は残念ながら選ばれなかった。

悠人は多少自信があっただけに落胆したが、精一杯やっという実感はあったので、悔いはなかった。

他の部員も同じ思いだったようだ。

3年生にとっては最後のチャンスだったので、無念さはあったと思うが、2年生の悠人は逆に来年への闘志に燃えたのだった。

来年こそは絶対、大会で選ばれる作品を作りたいと密かに思った。


 そんな中、『朗読部門』の美玖と『アナウンス部門』の彩は地区大会の代表に選ばれた。

放送部全員が歓喜の声を上げ、2人の県大会への出場を喜んだ。

顧問の山本先生は、感極まって涙目になっていた。


その後、『回転ずしのネタロー』で行われた慰労会は、みんなが食べて飲んで笑って楽しんだ。

 悠人は、彩の頑張りが報われたことが自分のことのように嬉しかった。

山本先生も美玖と彩に

「よくやった!よくやった!」と何度も何度も繰り返し、

「僕が顧問をして初めての快挙だ」と喜んでいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 彩から、大会後、『マシュウおじさん』宛に大会で選ばれた驚きと喜びの手紙が届いた。

そこには以前の手紙で、原稿を見るのも嫌だと愚痴をこぼしたときに、マシュウおじさんが言ってくれた言葉が心に響いて凄く救われたこと。

あの言葉がなければ落ち込んだままでこんな日は来なかったこと。

等々、記されていて感謝の言葉が綴られていた。


 悠人は、自分でも何を書いたかは覚えていなかったが、彩ちゃんの力になりたい、彩ちゃんに自信をもって大会に臨んでもらいたい、その一心で書いたことは覚えていた。

それゆえに、悠人の手紙で彩から救われたと言われ、心が躍るのだった。

そして、彩の努力を陰ながら見ていた悠人は、『マシュウおじさん』としてではなく、悠人として彩を支えていきたいと思うのだった。

だが、自分が『マシュウおじさん』であることは言えない。

そのことで心が苦しくなるのだった。





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