第4話
悠人は大会のたびに順調に記録を伸ばし、2年になると期待の新人と言われるようになっていた。
毎日の練習も怠らず、悠人の頭の中は走ることでいっぱいだった。
そんなある日のこと。
いつものように、部活を終えて家に向かい自転車を走らせていた。
あたりは薄暗くなりかけていた。
自転車で直進中に右折していた乗用車に衝突、悠人は自転車ごと飛ばされてしまった。
気づいたときは病院のベットだった。
事故の時に自転車の車輪に左足を巻き込まれた状態で、自転車ごと飛ばされたことが原因で左足首を複雑骨折しており、完治するのも数か月かかった。
歩くまでには回復できたが、陸上選手として走ることは難しくなった。
それまで、悠人は走ることが生きがいであり、大会で優勝することが目標で全てをかけていたため、走ることができないことが、全人生を否定されたほどのショックであった。
何より期待の新人と言われチヤホヤされていたのに、走れなくなると誰も見向きもしなくなった。
その為、何もかもが嫌になり、投げやりになっていったのだった。
学校では、授業が終わると逃げるように家に帰り、ただのらりくらり過ごしていた。
小学校の時からの友達だった白石亮が心配して家にも再々来てくれたりしていたが、相変わらずやる気のない日々が続いていた。
陸上部に入った頃の、意気揚々としたやる気満々の悠人は、すっかり変わってしまって見る影もなかった。
そして
あの事故さえなければ……。
走ることさえできれば……。
陸上の強い高校にも推薦で入れたのに……。
もう取り戻すことができない過去を悔やみながら悶々と過ごすばかりだった。
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