第17話
一週間後、彩は何とか原稿を仕上げていた。
山本先生にその原稿を見せると
「うん、なかなか良く出来ている。インタビューの言葉も原稿の中に入れているのは点数高いよ。あとこれを1分10秒以上1分30秒以内に読み切らないといけないから実際アナウンスしながら言いにくい箇所などは直しながらやっていこう」
原稿のオッケーが出て彩は取り敢えずはホッとした。
ホッとするのもつかの間、山本先生は早速読んでみるように言ってきた。
彩が原稿を読み終えると
「今のタイムが約1分だ。ちょっと後半が早口になっている。それから声が小さい。インタビューの内容を読む前の間が早い。『私が』の『が』は
以前、由紀先輩が山本先生は大会の時は厳しくチェックが入ると言っていたのはこのことかと思いながら
「……」彩が黙っていると
「鼻濁音はわかるだろ?『がぎぐげご』と鼻にかかった発音をすると聞こえ方が少し柔らかくなる。自然に聞こえるからね。ちょっと『私が』って言ってみてごらん?」
彩は鼻にかけながら
「私が」と言ってみた。
「もう一回、鼻にかけて『が・ぎ・ぐ・げ・ご』って言ってごらん」
「が・ぎ・ぐ・げ・ご」
「さっきよりは良くなってる。まぁ、これは何度も言ってたらうまく言えるようになるから、さっき注意した事に気を付けながらもう一度」
彩が読み終わるたびに指摘される個所が新たに増える。
「『…します。しかし……』の所は『…しますが……』に変えた方が滑らかに聞こえるので直そう」
「表情が硬い」
「もう少しはっきりと」
「〇〇のアクセントが違う」などなど。
いつまで続くのかと彩が思っていると
「厳しいようだけど最初が肝心だからね。いったん癖がついたらそれを直す方が更に時間がかかるからね。大丈夫、かなり良くなってきているからこのまま毎日練習するように。今日はここまで」とやっと解放された。
こんな状況は1週間続いた。
(疲れたぁ~)
彩は家に帰るとベッドに倒れ込んで暫くは起き上がれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます