第56話伊藤愛美はアンドロイド
最初に目を覚ました時はカプセルの中で浮く自分の姿だった。
「ようやくようやく完成した」
下を向くそこにいるのは見知った顔の男性。
「お父さん私死んだんじゃないの……?」
見知った男性は私の脳内にあるデータから解析して父親だと判断する。
「愛美お前を事故で亡くしてから私はお前を造る事だけを考えて生きてきた」
「私を造る事だけ」
脳内データに保存されている堺愛美という人物は幼い頃に亡くなっていた。
そして幼い頃に亡くなったはずの堺愛美が大人の姿でカプセルに閉じ込められている。
「私はお前をアンドロイドとしてこの世に蘇らせたんだ」
「私がアンドロイド……?」
お父さんからの話じゃ堺愛美の脳をデータ化しそこからアンドロイドの体を作りデータ化した脳を移したらしい。確かにさっきから自分の脳内には幼い頃の記憶が流れこんできてなんで自分が死んだ時の事を知っているのかおかしいと思っていた。自身の胸を触るが人間の女性のように柔らかく本当にアンドロイドか怪しいところだ。
「本物の人間みたいだろ苦労したんだ人間の骨格から構造まで全て再現する事が一番大変だった」
「なんで蘇らせたりしたの……!! 私は」
「愛美……お父さんはなあの時の事故の事を後悔してるんだ。あの時愛美とした約束をお父さんが守ってれば今も愛美は生きて家族団欒な生活を送ってたんだと思う。だから愛美許してくれお前をアンドロイドとして蘇らせた事を」
それから双子の姉だった堺霞に紹介されたが昔よりも関係が悪化し関わるなと言われた正直少し悲しくなってしまった。
行く所がない私は今じゃお父さんの研究所に身を置いて暇を持て余してた所をお父さんからある日アイドルオーディションを勧められた。昔の私の夢だった事をお父さんは話す脳内データにも残っていたので真実なんだろう。
自身の体は人間と同等レベルに造られているのでアンドロイドとバレる心配はない。それにお父さんは私を造る際に人間の感情という物も埋め込んだと話しているので普通に人間として偽れるレベルなのだ。
最初は気紛れに受けたアイドルオーディションだったがまさかのオーディション合格という通知がお父さんの研究所に送られてきた。
そして名前は伊藤愛美と偽りの名を名乗りアイセブンのアイドルとして売り出した。
別に人間になど興味がなかったのでファンには適当なあだ名を付けてメンバーとも仲良くならずに過ごしてきた。
そしてドラマのオファーが飛び込みメンバーが集まる集合先に到着した時、昔馴染みの男子がメンバーと話していた。その子は幼くして亡くなる前の私とよく遊んでいたと脳内データに残っている。けど昔とは違い身長がぐんと伸びていた。
最初は興味無い素振りをしてずっと観察していた。そしてドラマ撮影が始まった次の日。
立花波華が奪った城田亜梨沙の携帯を立花波華が出ていっている間に鞄から回収。ドラマ撮影が終わり全員がホテルに戻る頃にメールを打ってあっくんを呼び出す事に成功する。
お父さんに護身用として持たされていたスタンガンを使い気絶させてお父さんの母校だった廃校に連れてくる事に成功する。
お父さんの母校だった廃校は今宿泊施設として貸し出ししていたので、お父さんに頼んで貸し切って貰っていた。
今は私とあっくんの二人きりだ。
「まだ寝てるよね……?」
ツンツンと頬っぺたを突っつくがまだ起きる気配がない
「あっくん……!!」
ずっと我慢してきて遂に欲望が解き放たれた。
「あっくん…あっくん…あっくん」
顔同士をスリスリと擦るよくお父さんがやってくる真似事だがこうしてるとにやけてしまう。
「いけない、いけない」
自我を取り戻し止める。するとお父さんから借りた携帯から着信音が鳴り響いた画面には霞と表示されていた
「もしもし」
「彰人を返せ」
声の持ち主は霞に違いないけどこの声はあの時再会した時と同等レベルに怒っている声だ。
「あっくんはもう誰にも渡さない」
一言だけ伝えすぐに通話を切った。
その後すぐにあっくんが目を覚ました最初にした事は手料理で作った弁当をあっくんに食べさせる事だった。
腕前ならお父さんの研究所に身を置いている時にお父さんに作っていたので、自身はあったがあっくんに食べさせるとなると不安で仕方なかった。
あっくんは最初食べるのを躊躇してたが一口食べるといつの間にか完食していた。
嬉しくなってあっくんに首輪を嵌めて外にある風呂の施設に連れていく。
最初こそ気合いを入れてあっくんの服を上だけ脱がしたが恥ずかしさが勝って、下はあっくん自身に脱がせて持ってきた男性用の水着を手渡した
お風呂は露天風呂の為外に出る、あっくんに逃げられても困るので片方の腕に手錠を繋ぎ逃げられないようにしていた、滑らないよう細心の注意を払いお化け屋敷に入って怯える女子のようにあっくんの腕を組む。
そして気になったのがあっくんの背中だ。
自身の脳内データだと、あっくんの背中はまだ扉のドアに届くかギリギリだったのが残っていた。だが今のあっくんの背中と比べればやっぱり成長したと感じるしかない。
危ない危ない、また自我を忘れてしまう所だったあっくんのリードを引っ張って方向を変える
用意していたバスチェアにあっくんを座らせ片方に繋がれた手錠を外しあっくんの腕を重ねて手錠を繋ぎ直す。
あっくんの頭と体を洗い終わって、露天風呂の湯船に浸かっている途中にあっくんから紙袋について聞かれた。
あっくんが起きてからずっと顔を晒さず紙袋で顔を隠していたのであっくんも気になっていたのだろう、だがその質問には答えずその後逆に気まずくなり沈黙になってしまった。
その後露天風呂の湯船から上がりあっくんを連れてバスタオルで体と髪を拭いて乾かし、用意していた白の半袖をあっくんに着せて上に青色のジャージを着てもらい施設から出る。
施設から教室に戻って来て流石に喉が渇いたのであっくんを教室で縛って飲み物を取りに行って教室に戻ってくるとあっくんは教室からいなくなっていた。
でも簡単にここから逃げ出せないように細工していた為、一度校内を見回ってあっくんを探そうと考えた。
予想通りあっくんは外に出る為には渡り廊下しかないと思いついたらしい、仕掛けて置いたサイレンが鳴り響くのが聞こえ急いで行くとそこにあっくんがいた。
けどどうやらあっくんは私の正体に気付いていたらしい、しかしまだ私の事を思い出してくれてはいなかった。
あっくんにスタンガンを当てて気絶させると、また教室の椅子に縄で縛りあげた。
今度は逃げられないように強く縛ったのでいくらあっくんでもこれで逃げる事はできないはずだ。
そしてあっくんのスマミフォンから着信音が響いてくる画面には憎き女の名前が表示された。
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