人気商品
高山小石
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「いらっしゃいませ、お客さま。今日はどういった品物をお探しで? たまたま入っただけ? まぁそうおっしゃらずに、ぜひこちらの商品を見ていってくださいませ。この傘はどうです? どこで忘れようとも、お客さまの元へ戻ってくる、優れものですよ。え、いりませんか? では、このコップはどうです? 何を入れても水になるので、海の上では大変便利ですよ。え、いりませんか? では、この枕はどうです? とびっきりの夢を見せてくれますよ。え、いりませんか? では……え、あれでございますか? さすがお客さま。お目が高い。あれこそ、この店ナンバーワンの人気商品でございます。あれと一緒に眠ると、起きた時、あれはお客さまになるのです。つまりですね、お客さまが明日は何がなんでも休みたいという晩、一緒に眠ると、翌日、お客さまの代わりにあれが出勤してくれるのでございます。今、ご使用のお客さまは、もう一万人にもなります。噂も聞かない? それはお客さま、誰も自分の秘密を言いたくないだけでございますよ。おや、迷っておられますね? 参考までに、お客さま、すでにこの商品、人気が高すぎて、当店でもこれが最後の品となっております。この機会を逃されますと、もう二度と手に入れることはできないかと……あ、お買い上げですか? ありがとうございます。こちらが保証書、こちらが領収書、こちらが仕様書になっております。どうぞ末永く使ってくださいましね」
客を見送ると、店員はニンマリした。
さぁ、これでアイツの魂は手に入ったも同然だ。アイツは何日で普通の生活に嫌気がさすだろう? 一ヶ月、いや一週間ってところか? まぁどっちにしても、すぐ手に入るに違いない。悪魔界の人気商品、人間の魂が。
人気商品 高山小石 @takayama_koishi
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