外れレアスキル【暗算】しか取り柄のない僕は、実は【即時演算】という最強のレアスキルを持っていた!【即時演算】で無双したら何故か僕の嫁になりたい女性陣が増えてしまい困惑している。

卯月ミント

第1話 Sランクパーティーに追放される外れレアスキル持ち

「……え? 今なんて言いました?」


 ここはダンジョンの奥深く。

 レアモンスターの目撃情報があり、僕たちSランクパーティーも素材を目当てに狩りに来た、というわけなんだけど……。


「お前とは今から別行動だ、といったんだ」


 Sランクパーティーのリーダーである剣士が言ったその言葉が、僕には理解できなかった。

 いや、正確には理解したくないと言った方が正しいかもしれない。だってそれは、今までずっと一緒に戦ってきた仲間からの追放宣言なのだから。


「そんな。僕が何をしたっていうんですか」


 僕の言葉に、リーダーの男の隣にいる魔術師の女が口を開いた。


「なーんにもしてないわね、役立たずだし」


「僕はちゃんと役に立ってます! 敵の数を把握して誰がどの敵をどれだけ倒せばいいか指示したり、どのポーションをいくつ使ったら一番効率いいか考えたり……」


「それな!」


 リーダーの剣士がビシッと僕を指さす。


「ちょっと計算が速いからって粋がりやがってよ。それはリーダーの役目なんだよ!」


「まあ確かに計算は速いですよね、あなたは」


 僧侶の男が助け船を出してくれた! ……のかと思ったら。


「なんてったってあなたのレアスキルは【暗算】なんですからね! 唯一の取り柄が暗算! ぷくっ、あーはっははは……」


 と腹を抱えて笑い出したのだ。


「足し算と引き算ができてなんになるっていうんですかねぇ!」


「かけ算と割り算もできます!」


「キリッとして言うことがそれか!」


 リーダーの剣士が僕をもう一度ビシッと指差した。


「このレアスキル詐欺めが!」


「でも、【暗算】が滅多にない珍しいスキルなのは本当です!」


「あたしたちさ、上を目指してんの。だからレアスキル持ちのあんたを仲間に入れたのよ。まさか珍しいだけでなんの役にも立たないなんて思わったからね! しかもちょっと計算ができるからって人の戦法にまで口出ししてきてさ!」


「ちょっと待ってください。だからってこんなダンジョンの奥深くで一人で別行動しろって……、本気なんですか!?」


「本気も本気だ。お前はクビなんだよラディス。俺たちはもっと上を目指すんだ」


 リーダーの男の言葉に僧侶の男はゲタゲタ笑った。


「ぷくくく、あーはっはっは!! 上、上! それいいですねえ! じゃあ最後の試練と行きましょうかね」


「最後の試練?」


「あなたも上を目指して下さいよ。このダンジョンから一人で脱出してみせるんです」


「なっ……」


「脱出できたら見直してあげますよ。見直すだけでクビは変わりませんけどね。脱出できないなら、まあその程度ってことで、人生を諦めて下さい」


「そんな、無茶苦茶な」


 何度もいうが、ここはダンジョンの奥深くだ。しかもレアモンスター――『ブリリアント』の目撃情報もある。


 ブリリアントは純金製の蟻だ。倒せば純金が手に入る。純金以外にとれる素材も貴重なものばかりで、魔法薬用に高価に取り引きされる。だがそこそこ強く、仲間を呼びまくるから簡単には倒しきれない相手である。


 それでも倒しきったらとんでもない数の貴重な素材が手に入るため、ある程度レベルの上がった冒険者パーティーからは垂涎の的なのだが……。


 とてもじゃないが一人で倒しきれるような相手ではないのだ。


「そんじゃそういうわけで、あばよ外れレアスキル!」


 リーダーは地面にポーションを投げつけた。


「!」


 煙が収まると、そこには誰もいない。

 脱出ポーションで脱出してしまったのだ。

 本当に置いていかれた……。


(マジで?)


 僕は呆然と立ち尽くしていた。


 * * * *


 地上に脱出したSランクパーティーの面々は、みな一様に晴れやかな顔をしていた。


「あぁ~スッキリしたぜ」


 リーダーの剣士がいえば、


「ほんとほんと!」


 と魔術師の女が追従する。


「あいつ、『大技ばっかりだとすぐMP切れになるから小技連打でいきましょう。アイスライト3回で殲滅できますよ』とか勝手に制限してくんのよ。まあ、あたしは大魔法連打する爽快感が好きだから聞きゃしなかったけどね」


「荷物持ちになにが分かるっていうんだよな!」


「これでもうイライラせずに大技をいつでも自由にぶっ放せるわね。ほんとせいせいしたわ~」


「まあまあ。彼が荷物を持ってくれたおかげで私たちも戦えたわけですし、そこは感謝してもいいのでは? まあ口出ししてくる荷物持ちなんて戦力外通告するのは当然ですけどね。戦闘の邪魔にしかならないですから」


「ああ、ラディスには感謝しないといけないよなぁ。あはははははは……」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る