超短編恋物語

東雲れい

例えば。

 例えば、僕が君に『好きだ』と言ったとして。その時君は、どんな顔を僕に見せるのだろう。


 つん、と冷たい空気が鼻をつき、身を縮ませてほう、と一つ吐息を空に滲ませる。真白でゆらゆらと曇天の灰に溶けたそれは、僕の心を否応なしに暗く照らす。僕はこの季節が好きだ。身に響くこの寒さで、僕は僕とその他との境を確かめることができるから。


 でも、今年の冬は寒すぎる。

 僕は、この冬が嫌いだ。


 例えば、もしもの話だ。去年の冬に戻れて、その冬をずうっと繰り返せたのなら。

 そんな叶うわけもない夢を見ながら、僕は今日も現実という日々に微睡む。


 君のいないこの冬は、僕にはちょっと寒すぎる。

 あの時、想いを告げることを躊躇った僕を、微睡みながらほんのちょっとだけ恨むのだ。


 例えば、僕があの時君に『好きだ』と言ったとして。今の僕はどうなっていたのだろう。

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