【16話 頼もしい味方】

 ドヒュマンッグ犬人間の警察官は暗い空の中を下りていく。


 周囲には静寂の暗闇に響く騒がしい物音と、暗闇の中で目立つ灯りがあった。


 そして、騒音が聞こえてくる方角を見つめるドヒュマンッグ犬人間の警察官。


(うん? あそこなんだか騒がしいな。ってか、あの灯りは明らかに誰かが居るって事だろ!)


 灯りに向かって宙を進んでいく。


(あっ、やっぱり誰か居た! って、さっきの子たちが野生生物に襲われてるじゃないか!)


 ドヒュマンッグ犬人間の警察官はたかに向けてアサルトライフル@20を構える。


(間に合えっ!)


 引き金を引くと、銃口から五センチメートル程の先端がとがった弾が連続で五つ暗闇に飛び出していく。更に、ドヒュマンッグ犬人間の警察官の腕も五回震える。アサルトライフル@15の弾の残りは十五発。


 大きな発砲音と共に勢いよく飛んで行った最初の銃弾は、たかの側面を貫いていった。


 たかは甲高い鳴き声をあげながら吹き飛んでいく。


【ガッダア!】 


 更に、もう一発の銃弾が吹き飛んだたかの体に追い打ちをかけた。


 たかはもう一度吹き飛ばされ、残りの三発を無反応で受け止める。そして、“肉”はゆっくり回転しながら宇宙に落下していった。


 そして、ドヒュマンッグ犬人間の警察官は二回連続で吹き飛んでいく。

 

 一方、ンザールゥは目を見開きながらたじろぐ。


(ミャッ!? 一体何が起きたミャ?)


 クロスボウ@0の下部に、弾倉を差し込み終えたマサルン。そして、顔をこわばらせながら呆然とする。


(ふぉぁっでゃ!? なんだ、銃声が聞こえたぞ!? オレのクロスボウじゃないよな? いやいや、撃って無いし!)


 ンザールゥとマサルンは真剣な眼差しをドヒュマンッグ犬人間の警察官に向けた。


 尻尾を上げながら手を振るドヒュマンッグ犬人間の警察官。


「やぁ、大丈夫だったかい? 早速凶暴な生物に襲われてたねー。俺が来てなかったら危なかっただろ、感謝しろよー?」


 マサルンは口の端を上げながら語気を強める。


「あれ、お兄さんこんなところで何してるんですか!?」


「いやぁ、俺もさ、行方不明になったアーノルド君の事が心配でさ、君たちを追ってきてしまった」


 眉尻を下げながら体を手で押さえるンザールゥ。そして、硬い笑みを浮かべた。


「お兄さん、助けてくれてありがとミャー」


 ドヒュマンッグ犬人間警察官もかわいた笑みを浮かべながら肩をすくめる。


「当然の事をしただけさ、お礼はいらないよ」


「ボクにとってはその当然で命を救われたミャ。それより、お仕事は大丈夫ミャ?」


 眉尻を上げながら語気を強めるドヒュマンッグ犬人間の警察官。


「それはだね……残念ながら大丈夫じゃない!」


「ミャ、どういうことミャ?」


 ドヒュマンッグ犬人間の警察官は尻尾を垂らしながら苦笑いを作る。


「君たちに忘れ物を届けるという事で、特別に数十分だけカイルの外に出ても良いって事になってるだけで、仲間に仕事を押し付けてここに来てるんだよ」


 小首をかしげるマサルン。


「えっ、忘れ物って?」


「ん、無いよ? 君たちの活動を手伝いに来たんだよ。本当はもうすぐ下門に戻らなきゃいけないんだけど、こんな真っ暗な外に居る子供を放っておけるわけないだろ?」


 マサルンは目を見開きながら微笑む。


「お兄さん、なんて優しい方なんですか!」


 尻尾を上げながら両手をあげるンザールゥ。


「お兄さん、ありがとミャー」


 ドヒュマンッグ犬人間の警察官は首をゆっくり横に振る。


「本当に優しいのは、君たちの方だよ」


 真剣な眼差しをドヒュマンッグ犬人間の警察官に向けるマサルン。


「あの、来たばっかりのところ申し訳ないんですが、ここで喋ってる間にもアーノルド君が無事でいられる可能性が減っていきます。すぐに捜索を再開させないと」


「あぁ、なんか悪いね、俺が引き止めちゃって」


 マサルンとドヒュマンッグ犬人間の警察官、ンザールゥはさらに空を下りていった。

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