第2話 敢えて辛い人生を選ぶ魂

 待合室の魂達の最終作業は、地上で生まれた自分が亡くなる時の姿の制作。


 3Dパズルのように、フィットするパーツをくっ付けると出来上がる。

 大抵の魂達は、天寿を全うした老人の姿を作り上げるから、その年齢層のパーツは多数有り、見付かりやすい。

 制作し終えた魂達は、自分が地上に降りるタイミングまで、ゆったりと寛ぎながら待機する事になる。


 殆どの魂達は、スムーズにその工程を終えて行くのだが......


 先刻から、あっち行ったり、こっち行ったり落ち着きなくパーツを探しまくっている落ち着かない魂がいる。

 その魂と同時に最終作業を開始した魂達は、とうに制作し終えて待機場所でのんびりしているというのに。


 こんなに手間取っていると、待機時間無しに、すぐに地上に降りる事になるのではと心配で、つい声をかけてしまった。

 

「どうしたのかね、見付からないのかい?」


 「あっ、神様。私の最終作業の年齢の顔のパーツが、なかなか無くて」


 そう、私は神様と呼ばれる事が多い。

 最も、地上の人間達が想像しているような全知全能の存在とは異なり、もっと人間味が強いのだが。


「君の最終年齢は、3歳か......」


 殆どが老齢で亡くなる事を選択するというのに、稀に、このような低年齢で早世する事を選択する魂もいる。


「これなんか、どうかね?」


 3歳の女の子用に顔を見付かったパーツでサッと制作してみた。


「悪くは無いのですが。もっと、可愛くしなくてはならないのです」


 私が制作した女の子は、どちらかというと、よくいるようなタイプの素朴な顔立ちだった。


「私の作品もそこそこ可愛いが、だめかね?」


 老齢で亡くなる時ですら、美醜に細かくこだわる魂もたまにいる。


「人々の印象に残るくらい可愛くなくてはならないんです!」


「どうして、そこまで、可愛さにこだわるのか、聞かせてくれるかな?」


 この魂が、たった3年しか生きないにも関わらず、なぜに可愛い女の子のパーツに執着して探しているのか、理由を知りたかった。


「私は、ずっと、ここから、地上を眺めていました。今の地球では、望んでいても子供に恵まれない夫婦もいます。貧国では、食べて行く事すら難しく、病気になっても、病院に連れて行くお金も無く命を落とす子もいます。それなのに、ギャンブルなどの自分の余暇を優先し、子供を車に乗せたまま熱中症で亡くならせたり、虐待して殺す親もいます。心を覗くと、その予備軍となる親も沢山存在しています。そういう親達を思い止まらせ、そんな可哀想な子供が1人でも減ってくれるように、私は可愛い姿でより多くの同情を引くように印象付けて、一生を終えたいのです!」




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