第3話

「ねぇ、こんな事ばかりだったから、僕の事も忘れた?」


 2回の流産の後に、僕の番になったけど、もうその時は、さすがにママも、哀しみに支配され続けて、期待する事を忘れてしまっていた。

 妊娠検査薬で陽性になった時も、またあの哀しみの時間がやって来る事ばかり恐れていたね。

 産婦人科で超音波画像を見せられても、喜びの感情は、殆ど無かったのを感じ取れて、僕は哀しかった。

 本当に哀しかったんだ。

 僕が生を受けても、喜んでももらえないならって、半ばヤケになってしまっていた。

 でも、ママの気持ちも正論かも知れない。

 喜ばない事でしか、哀しい事態をまた迎えるかも知れない時の乗り越え方が思い付かなかったんだよね。

 それでも、2週間後、僕の心臓の動きが確認出来ないと、パパは「またか」と言っただけだったけど、ママは、長い間、ボロボロと涸れ果てそうなほどずっと涙を流し続けていた。

 短い間だったけど、ママは僕をちゃんと思ってくれていたんだね。


 ありがとう、ママ。

 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る