第12話 私の違和感

「日向。すっごい疲れてたなぁ……」

彼が初めて見せた、元気のない表情がすごく心配になる。日向は、いつでも優しい笑顔で『ただいま』って言って、『晩御飯、どうする?』ってすごく柔らかく聞いてくれる。私は、そんな日向に、居心地の良さを感じている。でも、今日は……。

「もっと、気遣ってあげればよかったかな……」

日向が返ってきたときも、『疲れてるなぁ。優しく、寛容に』って思ってたのに、あんな態度取っちゃって。

 彼が晩御飯の支度をしている最中に、包丁で指を切った時もすっごく心配になったのに、『ばんそうこう、あそこだよ~』って、そんなこと言っちゃって……。自分の不器用さに嫌気がさしてくる。

「はぁ……」

ため息を零して、湯船の中に顔を沈める。温かい静寂に包まれていると、少し心が素直になれる気がした。

「お風呂から上がったら、ちょっとだけ、労ってあげよう」

小さく漏らした決心は、お風呂の白い壁に反響して、しっかりと私の胸に刻まれた。

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