夜の蝶ラブの観察日誌

たから聖

第2話 あら?久しぶり。

ラブは、昨日の元カノに振られた客、雅也の事を……起きぬけに思案していた。 『今度店に来た時…気を付けなきゃだわ、ふぅ』ラブはシャワーを浴びて寝汗を流していた。 『ラーメンか……体重の維持も大変なのよねぇ。』ふぁ~ぁ。とタメ息をつく。 出勤前には…夜の蝶は色々とやる事があるのだ。お客様とのライン…もラブのクラスに、なると…物凄い膨大な数が、ひっきりなしに来る…。近頃ラブは、ラインも面倒になり…しばらくほかっておいた。 ドレスを選びながら… 『今日は白のミニにしようかしら?』 ラブは部屋で、着替えて メイクもナチュラルに仕上げた。 『ん!今日もgoodね✨』ラブはグロスを小指で撫でた。マンションの一階までエレベーターで降りると…毎度のタクシーが止まっていた。 『運転手さん。お店まで、』と……ラブが言うと…運転手はラブの事を何とも思っていない様子で…『はいよ!毎度ありがとう。』とメーターのボタンを押した。 片道、2000円前後のタクシー代は、ラブには何の痛手もなかった。 『おじさん。またね♪』 とタクシーの運転手に軽く挨拶をすると…ラブは反対方向を見た。ホスト達が数名いるのだが……ラブを見付けるなり声をかけてきた。 『ラブさん。おひさ!』 『お~ラブさんじゃん!』とホスト達と時間があったので…話し込んでしまった。ホストのみんなは『ラブさんたまには来てよ~。つまんねぇ客ばっかでさ、ラブさんとなら俺喜んで相手するぜ~ハハッ!(笑)』 『ふふっ上手いわね?私は、仕事が恋人なの。でも……気が向いたらね♪』とホスト達が残念がるのを尻目に……ラブは店に入った。 店に入るなり若手のボウイ和希がラブに話があると…来た。 『ラブさん、あの~。いつもの社長が本日、ご来店予定ではあるのですが……ちょっと困った事に……。』 『何?困った事って?』 どうやら、今日から店に新人の女の子が入るために……ラブのヘルプに、付けられないか?をラブに聞きに来た様子だった。 ラブは新人をたくさん見てきたのだが…… みんな、お客に良いように扱われ、終いには…ホストにのめり込んでしまい、貢いで破産宣告した女の子も見てきた事もあったのだ。 ラブは少しだけ間を置いて……。 『いいわ、分かった!(笑)どんな子?……』 ボウイの和希は、実は、と話を続けた。 『社長の娘様のお知り合いの方だそうで。困った事に……。』 『あ!(笑)ワガママなのね!分かったわ…ふふっ』 『ラブさん!話が早い、さすがトップ!』 と和希の表情がゆるんだ。 店が開店する前に……ヘルプにつく女の子が、ラブの元へ挨拶に来たのだが、【今風の女の子】という感じだった。 たいして可愛くはないが愛嬌はあったので……ラブが前職は何?と聞くと……メイド喫茶という返事が帰ってきた。 ラブは正直、『今日は厄日になりそうだわ。』 とタメ息をついた。 開店して…1時間後、例の社長が数名の役職についた社員達と共に、店に来店した。 ラブはいつも通り、接客をするのだが…… 今日ばかりは…違った。社長と数名の役職の客は……メイド喫茶出身のコトに目がいっていた。 『じゃ~ん、コトちゃんは今日からこの店で働く事になりました~。』 コトは、『皆さんよろしくお願いします。』 と頭を下げた。ラブが接待をリードしていると……いちいちコトは、ラブさん!ラブさん!と話かけてくるので…… ラブは少々苛立ちを、覚えていた。 ラブがコトに、 『接客中は、お客様との時間に徹して、コトちゃん!遊びじゃないのよ?分かる……?』 コトは、どこのテーブル席についても…浮いた存在だった。ラブがコトの様子を観察していると…… 『ダメね、合コンに来て男性をまさぐる女の子って~感じだわ。やりづらい…正直。』 ボウイの和希に、ラブはそれとなく耳打ちした。 和希も、『俺も見ていてハラハラします(笑)』 違うテーブルにNo.2の、こころのヘルプに付いたコトは、また合コンまがいな可笑しな会話をし始めていた。 お酒も少々入り……コトは次第に…ただの酔っぱらいに変化していた。 社長と数名の役職達は……コトの接待では…何も楽しくない。とぼやき始めた。コトは、 『そんなコト言わないでぇ……もえもえきゅん!』 とお決まりの台詞を言うのだが……コトの放ったその一言で店の空気が、どんよりとしてしまった。 社長は頭を抱えていた。久しぶりの来店に…娘の知り合いを入店させて、『俺、終わったわ(笑)』 と社長と重役達は…No.2のこころと No.1のラブにも丁寧に、謝りにきた。ラブは、こころに瞬間的にアイコンタクトをとった。 『良いのよ?失敗するから成功ってつきものだから……。コトちゃんにも…この店が合わないって、きっと分かると思うわ……。』 ラブさん!と重役達と社長がプレゼントを持ってきていた。ラブは直感的に、コトちゃんに渡すはずのモノね?…と考えた。 ラブは知らないふりをして、『ありがとう💋頂くわ。』ラブがプレゼントの箱を開けると……。 セクシーなランジェリーシリーズがたくさん入ったモノであった。 『あ!(笑)ま、さ、か、クスッ…💖嫌だわ。もぅ。』 ラブは切り返して、その場は和んだのであった。帰り際……ラブは社長を呼び止めた。 『またね鈴木社長。それから………久しぶりに鈴木社長のベンツの助手席💖乗りたくなっちゃったわ~✨』 『こらっ。ラブさん!内緒!し~っ!』 『ふふっ💋✨』 ラブは社長と手を絡ませながら……鈴木社長は、名残惜しそうに帰っていった。 ラブは『喉がカラカラよ?何かのみたいわ!(笑)ふふっ。』 『今日は……俺がゴチしますから…。』 ボウイの和希が、ラブさんお疲れさまといって…… シャンパングラスに、キンキンに冷えた、レモン炭酸水を持ってきた。 『和希あなたも……お疲れさま✨』 ラブは、レモン炭酸水をクイッと飲み終わると…和希に話しかけた。 『久しぶりに…和に抱いてもらおうかしら?…』 少しだけ冗談ぽく、ラブは和希の耳元で…ふぅ。と話していると…… 和希は気の効いた言葉を投げ掛けてきた。 『ラブさん!そのランジェリーシリーズ!俺の前だけね?見せるのは…。』 ラブは、そうね♪と……クスクスっと笑い声を、あげていた。 自宅マンションに付いたのは…深夜の3時頃の事だった。ラブは、 『目まぐるしい1日だったわ~。んー!』と背伸びをして白いミニスカートを脱ぎ捨てて、 ランジェリーを姿見の鏡に写して…自分の体に意外とフィットするのには驚いていた。 ランジェリー姿で…ベランダにイスを出し タバコを一本指先で…もてあそんだ後…ラブは、タバコをスゥっと吸っていた。 吐息と共に煙が、夜の景色と妙にマッチしていた。

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