クリムゾン的な何か〜I love youと言えなくて〜

@maxyamada

第1話

とある私立高校で国語の教師を務める私は幹事愛子(かんじらぶこ)、新卒2年目の新米教師だ

黒縁メガネに軽くソバージュの入った髪型で自分で言うのもなんだが悪くない見た目をしていると思う

いつものように3年B組のクラス入ると出席を取る

この子達が2年生の時から国語の授業を担当しているので当然愛着がある

しかし何度かの席替えを終えても一つだけ全く変わらない光景がある

それは教壇の一番真前の席に必ず座っている彼、米国ヒッキー(こめぐにひっきー)君だ。

帰国子女でアメリカと日本のハーフ。

端正な顔立ちと丁寧な口調、少しだけカタコトな日本語がとても愛らしい生徒だ

私の授業の時もいつもニコニコと話しを聞いてくれてとても励みになる生徒だったのだが、なぜ彼がいつも中央前列の席を選ぶのかずっと不思議だった


あるとき職員室で先輩の女教師と米国君の話しをする機会があったので、なぜ彼がいつもあの席を選ぶのかという疑問を投げかけてみた。

すると女教師から衝撃的な言葉が聞こえてきた

「あなた、まだ気づいてないの?あの子あなたのこと好きなのよ。あんなにニコニコしてるの貴方の授業のときだけよ」


予想だにしない発言に愛子はパニックになる

確かに可愛らしい生徒ではあったが恋愛対象として見たことは一度もなかった

しかしそれを意識してしまった愛子にももう恋愛の感情が芽生えてしまったのだ。

もう愛子は米国の気持ちを確かめずにはいられなくなった


それから数日後、愛子は意を決して教室に入った。


「今日は漢文の授業の総仕上げです。

みなさんには昔の人に戻ったつもりで漢文で恋文を書いてもらいたいと思います。実際に好きな人やキャラクターを思い浮かべて返り点などを駆使して素直な気持ちを書きましょう」


「ええーやだよ〜」

「だったら先生も書いてくれよな」


生徒達が口々に不満を漏らすが、そこは授業でもある

米国の気持ちを確かめつつ授業も進められるという一石二鳥な名案を逃す手はない


キンコンカンコーン♪


終業のベルが鳴った

愛子は足早に職員室に戻ると真っ先に米国の答案を確認した。


そこには丁寧な筆記体でこう書いてあった


「僕には好きな人がいます。初めて見たときからその人の細やかな指先、はにかんだ笑顔、優しい眼差しの虜になってしまいました。

だから僕は何度席替えをしても必ずその先生の顔が一番近くで見れる席を選ぶのです。」


細かいニュアンスは違うかもしれないが日本語に訳すと概ねこんな感じだろう

込み上げるエクスタシーをギリギリ堪えている状態の愛子に米国の最後の一文が刺さる。


「Miss loveko…

I love you」


5歳も年下の子供のラブレターでこんなにも心震わされるなんて…


悔しい…でもこれ…

漢字ちゃう(感じちゃう)


ビクビクビックー

ヒクン ヒクヒク


終劇

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