たとえ持て余しても

 ひどく喉が渇いていた。私はいつの間にか果てのない砂漠を彷徨っており、何の為に歩いているかも自覚できずにいた。

 そんな時、片手に握っていた重い水筒に気付く。名も知らぬ旅人から賜ったものの、申し訳なさ故に一口も付けていなかった。

 中身はとうに傷んだと思いきや、澄んだ色を保ち続けている。

 温もりを持つその水をゆっくりと嚥下すると、私は歩むべき帰路を思い出し、確かな足取りで砂を踏みしめていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る