第2話 少しは痩せたのか?

 翌日。

 教室に入ると、いつもの冷たい眼差し。俺の席は教室の端だ。


「おはよー、出水くん!」


 誰も寄り付かない俺の席に美少女がわざわざ挨拶に来てくれた。


 比奈桃子ひなももこ

 ゆるふわのボブに顔はどのパーツも整っていて、優しさを表す垂れ目。

 こんなデブスな俺にも話しかけてくれる女神だ。


「あれ、出水くん。もしかして運動とかした?」


「え、う、うん……!」


 え、少しは痩せたのかな?

 そんな俺の期待とは裏腹に、比奈さんは苦笑気味に言った。


「水出くん、今日は少し汗臭いかな?」








「チクショォォォォォォ!!!」


 放課後になり、俺は走って帰宅

 奇声を発していたので、周りからは白い目で見られていたことなど気にならなかった。

 

 そして美少女ダンジョンに降りていた。


「美少女ダンジョン到着!! ステータスオープン! ステータスオープン!! クエストかもぉぉぉぉん!」



――――――――――――――――――――


 デイリークエスト


・腕立て伏せ 腹筋 背筋 50回 

 報酬:【痩せやすさLv.2】


・プロテインを飲もう

 報酬:【男らしさLv.2】


――――――――――――――――――――



「相変わらず報酬が能力じゃない! だが、まずは外見を変えなければ……じゃないと今までと一緒だ!!」


 悔しさを原動力に早速始める。

 要領は昨日学習したので、カウントされてない無駄な運動が減った。

 

『今日は少し汗臭いかな?』


 比奈さんがそう言った後、クラスメイトは大爆笑。


「おいおい、やべーよ!比奈さん面白すぎるっ」

「天然って言ってるってわかってても笑えるっ!」


 正直、泣きそうになった。

 けど、思い返せば——


『今日は納豆でいいか……』

『ふぁ……疲れた……寝よう』


 ——お風呂に入っていない


 そりゃ臭いわけだ。

 全部自分が悪い! 比奈さんにせっかく運動したと気づいてもらえたのに!


「うぉぉぉぉぉぉ!」


 クエストは達成したものの、その日は追加で3セットした。





「アイツ、またいるし……。このダンジョンで何してるのかしら」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る