【完結】必勝!美少女ダンジョン〜俺だけ入れるダンジョンで陰キャデブから大逆転……したいっ!

悠/陽波ゆうい

第1話 デブでいじめられっ子だった俺は、ある日ダンジョンに入る

 俺の名前出水祥平でみずしょうへい。どこにでもいる高校生——ではない。

 身長175㎝、体重100㎏

 容姿は脂肪がたっぷりした腹に荒れた肌。

 つまりはデブでブス。

 自分で言うのもなんだが、この容姿のせいで損ばかりしてきた。


 学校でもよくバカにされた。


「おい、デブス! いい加減学校来るのやめろよ〜!」

「お前の汚染された汗が飛び散るだろ」


 名前をイジってのあだ名。心無いクラスメイトたちからいじめられているのは今更のこと。


 家での1人の時間が唯一のが癒し。

 両親は海外の仕事でほぼ帰ってこないので誰とも会わない。


 そんなある日だった。



――――――――――――――――――――


出水祥平でみずしょうへい


おめでとうございます!

貴方は神による実験台モルモットに選ばれました!


〈プレゼント〉


【美少女ダンジョン】

 クエストを達成することによってレベルアップできる


場所:自室の押し入れ


ミッションをどんどん達成していけば痩せてモテモテになっちゃうかも! 

ではお楽しみください


――――――――――――――――――——


「……はい?」


 思わず口をあんぐりと開け眺める。


 愉快な電子音と共に、目の前に現れたのはテレビ画面のようなウィンドウ。アニメやファンタジー小説で出てくるクエストボードみたいだ。


「美少女ダンジョン?」


 とても惹かれるワードだ。

 そしてクエストを達成してレベルアップ……。


 これは経験値やスキルを得てダンジョン内にいる美少女たちを攻略していくみたいなものか!!


 めっちゃ興味ある!!!


 急いで自室がある2階に上がり、押し入れを開く。いつもなら木の板で行き止まりだが、そこは石造の空間にどこまでも暗闇。


「ほ、本当にダンジョンへと繋がっているのか!」

 

 厨二心をくすぐる。

 最低限の荷物を持ち、早速入った。


 しばらく進んでいくと、ピコンと音が鳴り、ウィンドウが表示された。


――――――――――――――――――――


 デイリークエスト


・腕立て伏せ 50回

 報酬:【痩せやすさLv.1】


・腹筋 50回

 報酬:【男らしさLv.1】


――――――――――――――――――――


「ここでやるってことか?」


 ミッションを達成したら何かいいことがあるだろう。


 俺だって昔は運動神経が良くて、体力テストでは賞状を貰っていた。まぁ中3からめっちゃ太り始めて今のデブになったけど。


 一旦、ヨガマットを取りに帰り、敷いた俺は、地面に両手両足をついて、腕立て始めた。






「ご、ごじゅう……おえぇ……」


 プルプルの腕をなんとか上げ、最後の1回。瞬間、力尽きたように地面にうつ伏せた。


 回数はステータスボードで数えられていたが、正しいやり方をしないとカウントされない。


 腕立て伏せは、足から首まで一直線になるよう姿勢を整えて、床につかない程度まで下げたら、そのまま1秒間キープ。

 その後、地面を押し上げて元に戻すと、かなり本格なやり方を指示されてキツかった。

 

 腹筋は、肘は開閉による胸の運動にならないようにお腹の筋肉に意識。

 起き上がる時、お腹の肉が邪魔して苦労した。


 カウントされてないのと合わせたら目標回数の2倍近くはしている。


『デイリークエスト達成。【痩せやすさLv.1】【男らしさLv.1】を修得』


 ピコーンという音が鳴って、頭の中にそんな機械的な音声が流れた。


『本日のミッションは以上になります。お疲れ様でした』


「お、お疲れ様でした……」


 あれ、これで終わり? スキル系は追加のはないのかな?


 待ってみるも、スキルボードは表示されない。どうやら今日はゲットできなかった。


「それにしても俺ってこんなに運動できなかったんだ……」


 運動部だったら軽い準備運動程度だろう。たった数年でこんなのもできなくなっていたなんて……。


 着ていたシャツは汗でぐっしょり。まるでバケツの水を被ったみたいだ。


「帰ろ……お家帰ろう……」


 立ち上がった時、後ろから足音が近づいてきた。

  

 ——まさか美少女か!


 振り返ると、角から出てきた女の子と目が合った。


 どこかの制服に腰には剣。ハーフアップの金髪に青眼。大きな乳房。小さな鼻筋に桃色の艶のある唇。まさに——美少女。


 これは是非ともお近づきに——


「で、出たわね、オーク!!」


「ち、違う違う!!」


 剣を抜き、刺してきそうな美少女を慌てて止める。


 良かった、剣を下ろしてくれた……。


「あら、よく見たら人間じゃない。言葉も通じるし」


「人間だよ!」


「そ、悪かったわね。でも貴方も悪いわよ? 体型が大きいし、なんか顔とかブツブツだし」


「ゔっ」


 初対面でいきなり酷い……けど自分のことは自分が一番分かってる。俺も寝ぼけてたまに鏡見た時、ビックリしたし。「しょぼオーク」とかたまに呼ばれるし。


「……すいませんデブスで」


 こ、これから下剋上する予定です(涙

 

「それにしても、そんな無防備な格好でなんでこんなところにいるのよ」


「俺は家からミッションを達成するために来て……」


「はぁ? 何言ってるの? このダンジョンはね——……って、もういいわ。貴方と話していても時間の無駄だもん」


 名前も名乗らなかった彼女は、くるりと体の向きを変え、去ってしまった。


 1人取り残された汗まみれの俺。


「え、何コレ?」


 罵倒されて終わった。

 てっきり、ミッションを達成したから美少女が現れたかと思ったんだけど。


 よしよし頑張ったね、と言われておっぱいにパフパフできるご褒美タイムじゃないの? 


 いつまで経ってもそんな雰囲気はこなかったので、大人しくダンジョンを出た。




 自室に戻り、叫ぶ。


「ステータスオープン!」


 シーン


 何も出てこない。もしかしてダンジョンにいる間だけしか出ないのか?


 叫んだのが自室で良かった。外とかだったらだだの痛い奴だ。


「それにしても疲れたーっ。飲み物飲み物」


  一階に降りて冷蔵庫の中を物色。

 3L入りのコーラの飲みかけを見つけ、手に伸ば——そうと思ったが止めた。


「せっかくあんなに運動したのにこんなところでカロリーを摂取したら勿体ないな」


 代わりに作り置きの麦茶を取った。

 そして久々の運動で疲労が抜けず、お腹が減らなかったので、夕食は納豆だけにした。


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