21

 無機質な声音だった。

 例えづらいが感情の無い棒読みな声。

 てか、何気にお前呼ばわりされたのが笑える。


 おいそれと質問も出来ないし困ったぞ。


 僕の望み・・・


 そんなもの・・僕には無い。


 欲望に忠実に考えたが、特に望んではいない。


 僕好みの女性とやりたいとか、大金持ちになりたいとか、誰か死んで欲しいとか、有名人になりたいとか・・・


 別に望んでいない。

 自分がここまで無欲な人間だったのに今気づいた。

 僕にあまりにも欲が無いから宇宙人さんは来たのかな?

 

 宇宙人さんは相変わらず動かない。

 瞬きすらしない。

 

 生きて・・というか、生物なのかすら疑わしい。


 僕は姿勢を正し、正座のまま深呼吸する。


「な、何でも・・望めば叶うのですか?」


 勇気を出して僕は尋ねた。


 暫く待つが答えない、答えてくれない。

 いやいや、あんさん答えてーやと心の中で叫ぶ。

 この思考も筒抜けなんだろうか?


「ずっと目を開けてますが・・シパシパしませんか?」


 答えない。


「立ちっぱなしも疲れませんか?」


 答えない。


「口が見当たらないのですが、お食事はどうなさっているのですか?」


 答えてくれへん。


「今さらですが・・男性ですか女性ですか?」


 機械的な声だったが男の声音っぽいけど、こいつ・・この方の下半身にアレっぽいの無いんだよなぁ。

 性別云々以前に男、女とかじゃなくて雄、雌とかなのか?

 そもそも性別なんてもんは無くて、そういった個体として認識するべきなのかも知れない。


 願いが叶うなら・・・


 愛子を生き返らせてくれとか頼めば叶うのか?


 それはそれで不可能なんじゃないかと疑ってしまう。

 人の命はそんな簡単なものでも無いだろう。

 望めば何でもということは、それに回数みたいな制限の有無も気になる。


 関係無いが小学1、2年の頃、願いが一つだけ叶うならみたいなやり取りを友達同士で話していたら、一人の友達が「願いを1億個に増やして貰う!」とドヤ顔で言ってたのを思い出した。

 その発言に対し、周りは「スゲー」とか「頭良い」とか言ってた気がする。

 欲望の赴くままに言ったであろう言葉なのに、皆から注目を浴びていたなぁ。


「それは無制限に・・何回でも叶うのでしょうか?」


 一応聞いてみる。

 これで、一回だけだったら慎重に考えなくてはいけないからだ。


 やはり答えない。


 いや、そんな事より、僕は宇宙人さんが言った言葉を信用しているのか?

 口ではなんとでも言えるし、それは無理とかも有るかもだし、そもそも僕の望みを叶えたところで、コイツ・・・宇宙人さんには何のメリットも無いだろう。


 分からん事だらけだ。

 正座もしんどくなってきたし、試しに何か頼んで実験してみるか?


 ・・・・いやいや落ち着け、それで、しょうもない願いを叶えて、そのままシュンって感じで消えてしまう可能性もなきにしもあらずだ。




 


 

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