アフターシナリオ 〜新たなる旅立ち編〜

第117話 新たな旅立ち

「うーん。今日も平和だねぇー」

「……おばあちゃんになるのはまだ早いわよ?」


 メディ村の実家でゆったりとしているのは私、サクラ・トレイルである。セレスが過去の世界線に旅立って早十年。のんびりと平和な世界を生きている。


「ババ臭くなんてないもん……」

「そこまで言ってないわよ……」


 私の横でため息をついているのはモフモフの狐娘、カトレアちゃんだ。住んでる場所が隣村なだけあって学園を卒業した後も良く遊んでいる。私はエルフで長寿なだけあって十五歳で一度成長が止まり、次に成長し始めるのは数百年後らしい。一方のカトレアちゃんは既に綺麗な大人へと成長している。そういえば母さまは既に大人の姿まで成長してるし何歳なん…………いや、これ以上考えるのは止めておこう。心無しか周囲の気温が下がった気がするし。


「セレスが頑張っているのにこんなゆっくりしていていいのかな?」


 私のパートナーであるセレスは十年前に他の世界線に旅立ってから今までずっと魔王を鎮めるために頑張っている。一人で寂しくないかな? 甘えんぼだったし一緒についてあげたかったな。


「良いも何も私達が今セレスの為にできることは無いんだから仕方ないでしょう?」

「そんなんだけどね。何もすることが無い期間がこうも長いと落ち着かなくて」

「そうね。十年前まではずっと忙しかったものね」


 この世界に転生してからはずっと魔王を倒すために頑張ってきた。けれど十年前に、セレスを救ってからは目標も無くなり、燃え尽き症候群みたいな状態になっている。今は実家でダラダラと過ごし、カトレアちゃんと遊んだりミーヤやチコ、ライアスと念話機を通して近況報告をしあったりしていた。元々魔道具屋をしようとしていたミーヤとチコの二人は学園を卒業後、私のツテでルアード商会の下働きとして働き、今年独立して二人だけのお店を開いたらしい。ライアスはパートナーのレオンと一緒に獣人の国を纏めている。最近は特に忙しいと愚痴を言っていた。


 今日も今日とてカトレアちゃんとのんびりしていると母がこちらにやって来た。


「サクラちゃ〜ん! ライアスちゃんから招待状が来てるわよ〜。あら〜。カトレアちゃんいらっしゃい」

「お邪魔してます」

「うんうん。ゆっくりして行ってね〜。サクラちゃん。これが招待状よ」

「ありがとう」


 母から招待状を受け取る。うーん。なんの招待状だろう? 前回の定期報告の時は何も言ってなかったんだけどな。


 早速受け取った招待状を開封して読んでみる。なになに? レオンから話がある? カトレアちゃんも連れてこいって? なんで? 理由は……書いてない……。うーん。どうせならそのままカトレアちゃんと世界旅行にでも行こうかな?


「へえ? 私も呼ばれているのね」

「ちょっと。勝手に読まないでよ」

「別に良いじゃない。減るもんじゃないんだし」


 いや、別に読まれても良いんだけどさ……。


「カトレア。レオンの話聞いたらそのまま世界でも見て回る?」

「……なんでそんな楽観的なのよ」

「なに?」

「なんでもないわ。行けそうなら行きましょう」


 ? 行けそうならってどういう事だろう。はっ! カトレアちゃんがライアスに取られる!? いたっ!


「叩かないでよ!」

「サクラが変な事考えるからでしょう?」


 うーん。そういえばカトレアちゃんって綺麗で可愛いのに浮いた話一切聞かないよね。なんでだろうか。周りの人達は見る目無いんじゃない?


「はぁ……」

「なに?」

「いいえ? 気にしないで」


 なんだか呆れてるような目で見られているけどどうしてかな?


 ―――


 招待状を貰った翌日、荷物を全て私のアイテムボックスに詰め込み獣人国へと向かう準備をする。確か国の名前は……。


「ラザニアだっけ?」

「突然何よ。お腹空いたの?」

「いや、獣人国の名前なんだったっけな? って思って」

「…………アニエスよ。どこにもラザニア要素は無いわ」

「…………二文字合ってるし同じ四文字だもん」


 半分も合ってるんだよ?


「…………」

「…………」


 そうだね! 全然違うよね! ごめんね?


 早速話がそれだけど私はまだアニエス王国に行ったことはない。つまりゲートで直接行くことができないのだ。


「まずはブルーム王国の王都に出てから魔動車出して港町に向かおうか」

「そうね。アニエス国はこことは違う大陸にあるしいろいろと準備も必要ね」


 カトレアちゃんの言う通り、アニエス王国はブルーム王国とは別の大陸にある。ライアスは元々ブルーム王国のある大陸にある集落に生まれたが、レオンに連れられてアニエス国に滞在中なのだ。ちなみにだがアースフィアには三つの大陸と一つの天空島、そして一つの海底王国がある。ブルーム王国と魔国は同じ大陸にあるため、海の移動は無かったけど今回は初めて海に出ることになり楽しみだ。


 私もカトレアちゃんもここ十年で魔動車の運転ができるようになっている。私が持っている魔動車はハカセ謹製の一品でなんと宙に浮いているから海の上も走ることができるのだ。その代わり動かすための魔力消費が激しいこと、風の適正が無いと動かせないといった制約があり、売り物にはなっていない。私は天の適正だけど極致に至ったあとも修行をしたおかげで他の適正も問題なく使えるから動かせるんだよね。今は実質私専用の車になっている。


「そろそろ行きましょうか」

「そうだね。行ってきます!」

「楽しんでくるのよ〜」


 ゲートを開き、母と別れの挨拶をする。


 アニエス王国へ、いざ行かん!!

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