第101話 根回し
今私ことセレスは一人王宮に来ている。目的はジークへの根回しだ。
「ジーク。おはよう」
「セレスが来るなんて珍しいの。どうしたの?」
呼びかけると直ぐに出てくるジークに早速要件を伝える。
「今夜
「!! 本気なの!?」
「もちろん!」
私が、サクラに祝福をすることを仄めかすと驚愕した顔をするジーク。それはそうだよね。今までの契約者は誰一人祝福を受けることは出来なかった。失敗して死んでしまっているのだ。
「悪いけどサクラも……」
ジークがサクラも失敗するのでは? と暗に伝えてくる。でも大丈夫! だって私の補助があったとはいえ黒の魔法にも耐えきったんだよ?
「ジーク。サクラは大丈夫だよ」
ジークを真っ直ぐに見つめて言う。本当の理由はまだ話せない。教えると私がなんで知ってるのかまで話すことになるから……。しばらく見つめ合った私達だったけど先に折れたのはジークだった。
「分かったの。今夜庭に二人が来るってシルビアに伝えておくの」
「ありがとう。それと……」
「見届け人も任せるの。もう一人はレオンなの?」
「うん。お願いね」
祝福をする時は決まりとして二人の神霊が見届けることになっている。……これは過去に契約者が死んだショックで祝福を授けようとした神霊が暴れたことがあるから。暴れた神霊を抑えるために最低でも二人の神霊がつくことになったのだ。暴れたのは私じゃないよ? …………暴れた本人に見つかったら愚痴を言われそうだな。なるべく黙っていよう。
さて、ジーク……王宮の人達への根回しも終わった事だしレオンにも見届け人をやるようお願いしないとね!
レオンを呼び出して話をすると案の定驚かれて反対されたけど私が折れないと最終的には溜息を吐いてから許可をくれた。
「ったく。なんで普段はポヤポヤしてるのにこういう時だけ頑固なんだよ」
「……今回は絶対にやらなくちゃいけないから」
サクラに祝福を授けるメリットは二つ。一つは単純にサクラが祝福を得られること。持ち主の必要な時に必要な効果を発揮するこのスキルは使うのが難しい代わりにとても強力だ。きっと私を攻略するための切り札になるはずだ。
もう一つは祝福には試練がある事。簡単に言うと私とサクラで一体一の勝負をする。私がどう戦うか、私の攻撃の癖は何か、私の弱点はどこか、……全てサクラに見て慣れてもらう。サクラが
―――
一通りの準備が終わりサクラを庭に呼び出すことにする。緊張して少し関係ない話から始めちゃったけど本題に入る。
「魔王の討伐なんだけど、止めない? サクラには魔王と戦って欲しくないんだ」
無意識で声に出してからはっとする……やっぱりサクラと戦いたくない! 私がサクラを殺すのも嫌だしサクラに私を殺させたくない! ……サクラの目を見てザワつく心を落ち着かせる。私の我儘を押し付けたらダメだ。私が生きていたら世界を滅ぼしちゃうし、そんな私を殺せるのはサクラだけなんだから…………。
「サクラ、付いてきて」
サクラを庭へ連れていく。サクラは首を傾げつつもしっかりと付いてきてくれた。
「……セレス、王宮に不法侵入しちゃったんだけど……」
「ここは私の管理してる庭であって王宮の物ではないよ?」
庭に着くとここが王宮だと分かったサクラがソワソワしだす。むぅ。私が何も考えずに呼び出したとでも? それに王族はジークが許可してるから入れるだけで本来は
「大丈夫大丈夫。ジークに話は通してあるから!」
なんでまだ首を傾げるの!? ちゃんと根回ししたよアピールなのに!!
私が膨れてると王子がやってきた。
「サクラ、本当に入ってこれたんですね……」
「そう言ったんだよ? でもシルビアは嘘だと思っていたんだよ?」
ほらね! ちゃんと伝えてたでしょ!! ってこっちを見てすらいない! むぅううう!
「神霊達のすることだから気にしていませんよ。私が来たのは本当に入れるのかの確認ですから。後でどうやってここまで来たか教えてくださいね」
ジーク? 後で王子に正しい事を教えないとダメだよ? なんで私達が入っちゃいけないと思われてるのさ。私の無言の圧にジークが頷く。良かった。ちゃんと伝えてくれそうだ。でも今は説明する時間も勿体ないし……。
「私の力でパパっと道を創っただけだから私がいないと入れないよ。気にしないで!」
「そうですか……。分かりました。では気にしないことにしましょう。ジーク、終わったら話せることだけでいいから教えてくださいね。では私はこれで」
王子が去り、しばらくしてレオンがやってくる。レオンが最後の確認をしてくるけど私の答えは変わらない。
むう。サクラに何するか説明しようとしたらレオンに水を刺された! これだからレオンは……。せっかちなんだから。
さて、説明すると言っても、教えることはほとんどないよね? 祝福することと、私と戦ってもらうこと! まだ勝つ必要は無いよ。でも、私の想定を超えてくれると嬉しいな。
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