第84話 セレシアとの戦闘 後半
氷華に魔力を一度込め薄く魔力を行き渡らせ、私は辺りの魔素を捕捉する。
「セレス、行くよ!」
「サクラ。……ありがとう」
「
全力で魔素を固定してセレスが魔法を使えないようにする。しかし、セレスの創った植物は止まってもセレスは止まらない。
セレスが爪を振り下ろしてくる。
横に躱しつつ氷華で爪を弾き魔力でセレスを覆いこもうとする。
しかし、セレスを覆っていた私の魔力が動かなくなってしまう。
『ふふん。私だって
少し間を取ったセレスから念話が届く。セレスを見ると生き生きとした感情と共にドヤ顔をしていた。
なんだか今の状況についていろいろと忘れてない? そう思いつつもさっきまでの昏い感情よりはやりやすいかと思い直す。
『セレス、本気で来てね?』
『……死なないでよ?』
言うが早く、植物が大量に生えてくる。魔素必要としない植物を創ったらしい。正直意味が分からないけどセレスだからしかたないね! 向かってくる植物を氷華でいなしつつセレスに向かう。
しかし、近付いた途端に全身から力が抜ける。魔国で何度も使い、身体強化並みに使い慣れた身体操作を使っているため影響はない。
しかし、視覚が、聴覚が、触覚が、嗅覚が、味覚が次々と消えていった。残っているのは魔力感知だけだ。
身体操作で無理やり体を動かして氷華を振るう。何千何万回と繰り返した動作の一つにも気を遣う必要があるけど慣れれば行けそうだ。
しかし、切りかかった瞬間に魔力感知に反応していたセレスの居場所が変わっている。
『私の位置はそこじゃないよ?』
目が見えないのにドヤ顔のセレスが頭に浮かぶ。どうやら魔力感知の裏をかかれたようだ。
かつてない強敵に自然と笑みが浮かぶ。
『まったく。耳も聞こえない筈なのになんで笑えるんだか』
魔力感知までも機能していない現状、既にセレスの場所も分からなければどこから攻撃が来ているのかも分からない状況だ。普通であればセレスを倒すのは絶望的だろう。それでも、私がやるしかないことだから!
一歩踏み出そうとした瞬間に嫌な予感がして横によける。
『よく躱したね。次は躱せるかな?』
やはりセレスが攻撃してきていたみたいだ。
でも一つ確信できた。セレスと過ごした時間が長かったからか、繋がりが強いからなのか、セレスがどこをどう攻撃しようとするのかが直感で分かる。
『ねえ、
セレスの疑問には答えず、魔力の操作に集中する。
動いて躱し、氷華でいなし、鏡を作ってレーザーを逸らしつつ再度セレスに近付く。しかし、近付くにつれて攻撃の勢いと密度が増していき段々と身体がボロボロになっていく。
前回、ニブルヘイム・改を使った時は中途半端に終わってしまった。一年半もの間ずっと戦いに身を置いてきた今だからこそ今みたいに維持し続けることができる。でも、それでもまだ足りないのなら! もう一歩先の可能性を! 今の私、セレスが鍛えてくれた今の私だからこそたどり着いた天の適正の極致! それがこれだ!
『
未熟な天の適正では魔素を停止させることしか出来なかったが、極致へと至ったことにより魔素を好きに動かしたり、魔素の働きを不活化させたり活性化させたりできるようになった。
火の魔法でセレスの創った植物を焼き払い、闇の魔法でレーザーを吸収する。聖の魔法で怪我を癒し、光の魔法で五感の停止状態を解除する。
驚愕と焦燥、そしてそれ以上の歓喜と安堵の感情が渦巻いているセレスに改めて向き合う。
「セレス、ありがとう」
私がここまでの極致に至れたのは祝福の試練での経験に魔国での色んな魔法を受けてきた経験。他にも今までの修行や戦いの経験のおかげだけど、その多くはセレスが機会を用意してくれていた。
セレスが魔法を使って再度植物を創ろうとするのを先読みして対処する。魔素が使えなくても植物が創れるなら魔素を使って植物が創れない空間に変えてやればいい。
「やるね。それでこそサクラだよ!」
セレスから純粋な賞賛と寂しさが伝わってきた。
そろそろ決着がつくと予感がしているのだろう。
一定の距離まで近付くとセレスが噛み付きをしようとしてると分かった。私はこれをわざと受け止める。無理やり受け止めたため、セレスの歯が私のお腹に食い込む。
「どうして避けなかったの?」
慌てた様子のセレスが口を離そうとするけど離れないようにしっかりと捕まえる。
「戦闘中に相手の心配をしてちゃダメだよ」
私はそう言いつつ全力でセレシアの祝福を使う。祝福は持ち主に必要なタイミングで必要な効果を持つ。それならば今が使うタイミングだろう。
天の適正を使いつつ
そして……。
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