第34話 親善試合開始

 授業が始まってから一週間が経ち、早くも親善試合の日がやって来た。

 今は会場に併設してある控え室でシルビアとライアス待機しているのは私ことサクラ・トレイルである。

 今は親善試合の対戦相手が誰なのかとても気になっている。


「相手は誰だと思う?」

「んー、流石に三龍生を連れてくるのは学園長もできないだろう」

「三龍生って?」


 唐突に知らない単語が出てきた。生徒会役員とか選ばれしメンバー的な人達かな? 


「三龍生はこの学園の最上級生から選ばれるトップスリーの総称だ。学園でトップは最低でもAランク、今期のナンバーワンの実力はSランクにも届くと言われている。俺らの相手としては不足無いが全員サクラレベルで変人だからな。素直に言うことを聞く奴らじゃないらしい」

「なんかディスられた?」


 説明ついでに私のことをディスられた気がしたんだけど気の所為かな? 


「気の所為だ気の所為。ま、ということで三人を除くと考えると誰だと思う? 実力的には生徒会か風紀委員が妥当だと思うんだが」


 気の所為だったか。ライアスとしてはあり得ないと思ってるみたいだけど私としてはその三龍生が相手になる気がするな。

 学園長は母と知り合いみたいだし期待して良いよね? 


「ライアス、その事についてですが、今朝、学園長からその三龍生が私達の相手だと聞きましたよ」

「おお! どんな人達だろう」


 さすが学園長! これは楽しみになってきた。


「学園長って凄いんだな……。のじゃのじゃ言ってるだけだと思ってたわ」

「今期の三龍生ですが天翼族で刀使いの楓さんを筆頭にドワーフでハンマー使いのクリストフさん、そして忍のルノアさんです」

「忍!?」


 侍に忍者が相手だとは……、やはり忍忍するのだろうか、ワクワクする。ん? そういえば


「今期の三龍生は全員物理型なんだね」

「いえ、確かに三人とも騎士科をメインとして所属している生徒ですがルノアさんは魔法科にも所属していますよ。ルノアさんは魔法科じゃなくて忍術科だと言い張ってますが」


 忍術科。あるなら受けてみたいね! 殿下の言い方からするとただの魔法科みたいだけどね……。それにしても。


「癖の強そうな人だね」

「おまいう」

「喧嘩売ってる?」


 共感してくれると思ったのに! 失礼な奴だな。


「時間が惜しいな、馬鹿なこと考えてないで準備しろよ」

「はーい」


 準備をしつつ作戦を確認する。基本方針は前に立てた作戦を元にして具体案を詰めたものだ。


「私の責任重大だね? 別に問題ないけど」

「しっかり頼みますよ。そろそろ移動しましょうか」


 準備のできた私達は会場へと足を運んだ。


 ―――


 私達が会場に入ると観客から歓声が沸く。すでに三龍生の三人は会場で待っていた。


「よく来たでござるな。拙者は楓と申す。今日は良しなに」

「某はルノア。闇に生き影に潜むものでござる」

「俺はクリストフ。こいつらが変なのはいつもの事だからスルーしてやってくれ……」


 三人に向き合うと三人が自己紹介をしてくれた。クリストフさんは疲れたような顔してるけど、どうしたんだろうか。


「私はシルビアです。よろしくお願いします。胸を借りるつもりで頑張りますね」

「俺はライアスです。先輩だからって手加減しませんよ? 今日はよろしくお願いします」

「サクラです。クリストフさんはお疲れの様ですが大丈夫ですか?」

「ほう、先輩を嘗めると痛い目に……、……いや、本気で心配してるだけだな? ……一応大丈夫だ。こいつらの相手をするのも慣れてきたからな」


 ジト目で楓さんとルノアさんを見るクリストフさん。二人に変わったところはないと思うんだけどな? 


「某がどうかしたでござるか? 残念ながら疲れをとる忍術は使えないでござるよ」

「いや、自制してくれるだけでいいんだけど……」


 な、なんてことを言うんだ……。もしやクリストフさんは忍についてなにも分かってないでござるな? 


「忍者に自制とは何を言ってるんですか! 忍は闇に潜み姿を見られないのに噂が独り歩きする様な派手さを併せ持つ存在なんです! 自制して忍者をやれると思ってるんですか?」

「お前もそっち側かよ……」


 親切心で忍について教えてあげたのにクリストフさんは更に疲れた顔をし始めた。大丈夫だろうか。


「忍の事をよく分かってるいい子でござるな。後で忍術について教えてあげるでござる」

「おー。ありがとうございます! 楽しみにしてますね!」


 やったね! 親善試合の後の楽しみが増えた。

 少しの間ルノアさんの忍談議をしていたが開始時間になってしまった。


「不満顔してるとこ悪いけど時間ですので。始めましょう」

「いくら忍愛のある後輩でも手加減しないでござるよ!」

「技をいっぱい盗んでみせます!」


 こうして火蓋が切って落とされた。


 ―――


 観客のボルテージが上昇するなか、楓対サクラ、ルノアとクリストフ対シルビアとライアスの二チームに分かれた。某忍者が疑問の声をあげたがサクラは知らんぷりだ。


「拙者から行くでござる」


 楓は風魔法と雷魔法を同時に発動してサクラに狙いをつけて居合切りをする。


「サクラ殿には申し訳ないが未知な戦力から対処するのは当然でござろう」


 そう言って残心をしつつサクラを確認する。


「いやー、流石に速いですね!」

「なっ!?」


 しかしそこにはケロッとした様子のサクラがいた。彼女の周りには雷が走っているが楓の発したものと違い桜色をしている。


「雷に適正があったでござるか……。良く躱したでござる」


 サクラはこれに返答せずに笑みを深める。新しく彼女の周りに桜色の炎が回り始め今度はサクラが居合の姿勢をとる。


「拙者に居合を仕掛けようとは……。蛮勇なのか無謀なのか……。見極めるでござる」


 楓は再度居合の姿勢を取ろうとして違和感に気付く。


「はっ!」


 足が凍りつき動けない楓をサクラが居合切りする。


「三つも魔法の適当があったのでござるか……」


 そう言い残して楓は崩れ落ちた。

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