傘が素敵ですね

 六年生になり、受験を控えたリンちゃんは塾の宿題が多いことを嘆き、夏期講習の選抜クラスに選ばれていたのにコロナで中止になったことを残念がり、学校の授業が面倒だと不平を言っています。


 お年ごろになったこともあり五年生の後半には以前ほど会話をしなくなっていたのですが、コロナによる休校明けは低学年の頃のようにおしゃべりしてくれます。ずっと家にこもっていたし、話す相手も少ないからストレスがあるのかもしれません。

 この日も「久しぶりに友達と公園で遊ぶ約束をしていたのに、朝から雨なんてどういうこと⁉」とボヤいていました。



 そんな雨の中、いつものように校門前の横断歩道で子どもたちを見守っていると、一年生の女の子が私の前で立ち止まりました。


「傘が素敵ですね」


 いつも使っているお気に入りの傘は紫地の蛇の目じゃのめ模様で、骨の数が二十四本ある和傘風のものです。

 とっさに「ありがとう」と答えたのですが、心の中では「月が綺麗ですね」を連想してしまいちょっとドキリとしました。(笑)


 そういえば昨日もちひろちゃんが同じように立ち止まって、黙ったまましばらく私を見上げた後、「いつもありがと」と一言。

 うーむ、また低学年女子限定のモテ期がやってくるのかもしれない(笑)。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る