第11章 ランクA 婚約者になるために

第234話 新たな生活に向けて

 あのあと、ラテス村には炎精霊、要塞都市エクレアには森精霊、それからトリル人の集落には氷精霊と、適性を見て各1種類ずつ守護精霊をつけることを約束した。


 ――まあ、これには争い抑制の狙いもあるんだけど。


 オレ自体は、ブラック企業に務めてはいたものの、社会情勢的には平和な国で育っている。

 が、基本的に人間は争いごとを起こしやすい。


 一方、精霊は役割分担が明確なためか争いを好まず、人族に比べてありのままを受け入れやすい傾向にあるらしい。

 上位精霊となったラテスの精霊と人族の力量差は明白で、しかも人族は「精霊の力」を基盤とした文明を築きつつある。

 この状況で精霊を怒らせるようなことはしないだろう。と思いたい。


「各国に精霊をつけるのは名案だと思うわ。こういう契約は、独自の力を持たない人族にとって効果絶大なのよ。実際ほかの星でも、精霊はもちろんドラゴンや天使、神獣にその役割を担わせる神族は多いわ」

「そうなのか。オレのいた場所では特にそういう文化はなかったと思うけど、割とメジャーなんだな」


 いやまあ、オレは生まれてこのかたずっと無宗教だし。

 そういうスピリチュアルなものとは無縁だったから、実際の有無は知らないけど。


「フィーネもそういう手法を使うことってあるのか? というか、おまえってラテス以外にも星持ってるんだよな?」

「そりゃそうよ。私は今、5つの星を管理してるわよ。ここは私の中では君の担当で、自分の管轄ではないという認識だけど。ちなみに私は、神獣とドラゴンを置くことが多いかしらね」


 い、5つってまじか。

 そんなにたくさんの仕事をこなしてたとは知らなかった……。


「君もこんなセール品じゃなくてちゃんとした星がほしいなら、手配するわよ。まあいきなりたくさん増やすのはオススメしないけど」

「セール品言うな! おまえがオレをここに置き去りにしたんだろ……」

「それはまあ……悪かったわよ。でも結果オーライでしょ? いいじゃない☆」


 こいつ!!!

 いやまあ実際結果オーライだけども!!!!!


「まあオレはもう少しラテス一筋で頑張るよ。名門神族としての勉強もあるし」

「そうね。せっかくここまで育てたんだもの。それがいいかもしれないわね」

「そういや引っ越しもしないとな」


 場所は既に、ラテス西方の海に専用の島を創ってある。

 あとはこの神殿ごとそこに移動するだけだ。


 ラテスに来てすぐのログハウス時代から、拠点はずっとこの場所だった。

 そこから精霊を救済召喚して一緒に世界を構築して、今度は人族を救済召喚して文明を発展させて――


 だからまあ、名残惜しさも正直ある。けど。


「新しい拠点では、もう少しゆったりとスローライフが楽しめるといいな」

「それは君の能力次第かしらね。母様もルアンも、そんなに甘くはないわよ。実際、君はまだ名門神族としての役割は果たせてないしね」

「――ぐ。が、頑張ります」


 まだまだ先は長そうだな……。

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