第233話 前に進むために
「ガーネットさんは王として適任かと思うんですが、どうですか?」
「……そうですね、一応私は元王族ですし、それもあって村長に推薦されたので――住民の反対がなければ私が担う予定です」
――え。
「え、ガーネットさん王族だったんですか」
「……一度奴隷に落ちた身ではありますが、それ以前は」
なるほど!?
仕事できて社交性も高くて性格も良くて所作も美しいとかどんだけハイスペックなんだと思ってたけど。
元がそういう立ち位置だったのならば頷ける。
……まあ例外もいるけど。
「……君、なんか今すごく失礼なこと考えなかった?」
「はは、気のせいだよ」
「……りょ――神様は、今後は神様としてのお仕事に専念されるということでしょうか? 遠い存在になってしまわれるのですね……」
ガーネットは視線を伏せ、寂しげな声でそうつぶやく。
その目には、うっすらと涙がにじんでいた。
「……ガーネットさんはハルト様のこと大好きでしたからね。私はてっきり、お2人は何か特別な間柄なんだと思ってました」
「――っなっ! わ、私はそんなっ――! じ、自分の立場くらい弁えてますっ」
「それってつまり、立場が関係なければ好きってことでは?」
「――――っ!」
ガーネットは真っ赤になって口をパクパクさせているが、言葉が出てこないのかそのまま固まってしまった。
「シオンさん、あなた賢いんですからもう少し発言には気をつけた方がいいのでは? フィーネ様もいる中でそんなこと……」
「私は自分が思ったことをそのまま口にしただけですが」
「それが良くないと言ってるんです」
「ヴァリエ王はガーネットさんに良いところを見せたいだけでは?」
「……ガーネットさんは魅力的な女性ですが、私はあくまで常識に則って話しているだけです」
心なしか、ヴァリエ王の表情が引きつる。
なんだこの淡々とした殴り合いみたいなの! 怖い!
「え、ええと……」
「そのことについてだけど」
「!? え、ちょ、フィーネ?」
いやいや一体何言うつもりだこいつ!?
今余計なこと言ったら場の空気が――
「もう分かったと思うけど、神乃悠斗は人族ではないし、あなたたちとは住む世界も寿命も立場も全てが違うの。神乃悠斗が浅はかな行動をとったことで何か勘違いをさせてしまったのなら、私からも謝るわ。ごめんなさい」
「…………そんな、神様は何も悪くは」
フィーネの覆しようのない強い発言に、ガーネットはうつむき、きゅっと唇をかみしめる。
その声は震えていた。
――そうか。
ガーネットさんは本当にオレのこと。
自分のしてしまったことを思い、心臓をわしづかみにされたような気がした。
「だからシオンも、今後変な勘ぐりはやめてちょうだいね。ガーネットはこれから国を作っていく、一国の王になる人よ」
「……大変失礼しました。私はただ、このまま離れていいのかと気になっただけですので。忘れてください」
――ああ。こうなる前に、オレがどうにかしなきゃいけなかったのに。
フィーネに尻拭いをさせてしまった。
シオンも、きっと不器用なりにいろいろ考えて、良かれと思って言ってくれたのだろう。
「……ガーネットさん、ヴァリエさん、シオンさん。これからも各国の王と星の管理者として、ともにラテスを作っていけたらと思います」
その言葉に、3人とも立ち上がってオレの前に跪いた。
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