第229話 異性との距離感って難しい……
フィーネの誤解も解いて、翌日にはガーネットへも説明して、「ラテスの危機」という住民の不安は払拭できた。のだが。
「――君はもう少し、住民との距離感を考えた方がいいわ。君にとってはラテスの民の1人でしかなくても、向こうはそうは思ってないかもしれないわよ」
先日話をした際、最後にフィーネがそう言ったのだ。
話の流れから考えて、ここでいう「ラテスの民の1人」というのは恐らくガーネットのことだろう。
そういえば、ハクもガーネットがオレのことを好きだとかなんとか言っていた。
言われた時は、まさかと思ったが。
しかしよくよく考えてみると、勘違いが生まれた日、ガーネットはやたらとフィーネやハクのことを気にしていた。
――いやでもなあ。
ガーネットは元々社交的な性格で、村長として村の男性たちに混じって話しているのをよく見かけるし、エクレアのヴァリエ王とも積極的に交流を深めている。
べつに、オレに対してだけ積極的なわけでは決してない。
ハクとフィーネはいったいどこで判断したんだ?
そもそもオレには、以前ハクのオレへの感情を盛大に勘違いした前科がある。
そんな男に、こんな状況で判断しろなんて無理がある。
せっかく良好な関係を築けているこの状況をぶち壊すような事態は避けたい。
し、二度もあんなことが起こったら恥ずかしくて死んでしまう。
――距離感、か。
そうは言ってもなあ。
威圧的な態度や冷たい態度は取りたくないし。
あまりにも社交辞令や業務連絡ばかりというのも失礼な気がする。
ガーネットさん、うちにハクやフィーネがいるからか、来るたびに手作りのケーキやらクッキーやら持ってきてくれるし。
受け取るだけ受け取って追い返すわけにもいかないだろ人として。
人じゃないけど。
いったいどうすれば……。
でも、少なくともフィーネは何かしら感じたわけだ。
しかも多分、良くは思っていない。
このまま続けてたら、早々にお試し期間が終了してしまう可能性だってある。
それは何としても避けたい。
が、本来社交性もコミュ力も低いオレにとって、ガーネットさんから得られる情報は本当にありがたいものでもある。
実際、彼女と話していたから気づけた住民の意見や改善点も少なくない。
それにそもそも、オレはガーネットさんのことも好きだ。
もちろん、恋愛感情ではなく人として、だけど。
ただ、オレのこうした対応が、もし本当にガーネットさんを惑わせているのなら。
それは本意ではないし、続けるべきではないのだろう。
オレは今や人ではないし、生きる長さもまったく違う。
何よりフィーネ以外の相手は考えられない。
うーん。なんというか。
これはいよいよ、領主という立ち位置で人族と交わる限界に来ているのでは?
むこうはオレのこと同じ人間だと思ってるんだもんな……。
冷静に考えれば、恋愛感情はないにしても、今後領主であるオレと婚姻を結びたいと考える人は出てくるかもしれない。
いわゆる政略結婚的な。
そんないざこざに巻き込まれるのは正直ごめんだ。
リエンカ家でやるべきことも今後増えていくだろうし。
ハクにはもっと自由に過ごしてほしいのに、人手が足りなさすぎてどうしても頼っちゃうしな……。
何かいい感じに距離を取る方法はないものか。
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