第156話 ハクとの今後の理想の形

「――す、すごいじゃないか! いやー、こんなすごい子がうちの子になってくれるなんて、うちはなんてラッキーなんだろう!?」


 バースはそう、オレの肩をバシバシと叩き、肩を抱いてくる。


「神乃悠斗は私が救済召喚したのよ! 感謝してよねっ」

「ああ、すごいことだぞフィーネ。よくやった」

「ふふんっ! まあ、私にかかればこれくらい当然だけどねっ」


 手違いで!だけどな!!!

 ――とはまあ、言わないでおいてやることにした。


「……あ、あの、リエンカ家に入るにあたって、1つお願いが」

「? 何かしら」

「その……ハクも家族として認めてもらえないでしょうか?」

「ハクって誰だい?」

「ええと……フィーネから譲ってもらった【何でもしてくれるモフモフ】です」


 オレとハクは家族だ。

 オレだけがリエンカ家に入るわけにはいかない。

 頼む――どうか、どうか承認してください……


「はっはっは! ハルトはモフモフを家族だと思っているのかい? 本当に面白い子だな。よし、いいだろう。そのモフモフも家族だと認めよう」

「! ありがとうございますっ!!!」

「よかったわね、無事ハクとも家族でいられて」

「ああ、これでハクにも堂々と報告できるよ」


 そんなサクッと決めていいのか、とか、早速名前呼び捨てになってるな、とか、つっこみたいことはあるが。

 とにかく今は、ハクが家族だと認められたのが嬉しかった。


「ハクはハルトの娘ってことでいいのかな?」

「あ、は――――えっ!? 娘!?」

「なんだ違うのかい? ああ、もしかして伴侶ということかな?」

「え、いや、その……」


 よく考えたら、家族のどのポジションとして迎えるのか考えてなかった……。


「ち、ちょっと相談して決めてもいいですか」

「呆れた。そんなことも考えてなかったの?」

「うるせえ。悪かったな無計画で!」


 個人的には、何となく妹くらいの感覚だったが。

 たしかに神族ではないハクをリエンカ家に置く方法としては、オレを介して、という形の方が何かと都合がいいかもしれない。


「悠斗くんの養子という形が一番だと思うのだけど、どうかしら? 伴侶――というのは、正直厳しいと思うわ。だってハクは、普段は人の形をしていても神獣だもの。根本的に神族とは違うし、どちらかというと獣の類なのよ。ハクにとっても、神族として生きなければならないのは苦痛じゃないかしら」

「――でも、ハクは」


 ハクはきっと、オレのことが好きだ。

 いや、自分で言うと痛いヤツ感がすごいけど。

 でもこれだけ一緒にいれば、色恋沙汰に疎いオレでもさすがに分かる。


「悠斗くんはどうなの? ハクのこと、本当にそういう意味で好きなのかしら? ずっと一緒にいる方法は結婚だけじゃないわよ。自分の気持ちが分からないまま結ばれれば、いずれお互い不幸になると思うのだけれど」

「…………」


 ――オレは。

 オレは、どうなんだ?


 何となく、いつからかこの世界ではハクと一緒にやっていくんだと思っていて。

 その自然な形は「家族になること」だと思っていた。

 そしてあわよくば、フィーネも一緒に3人で仲良く暮らせれば、と、思っていた。


 でもそれは――

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