第129話 フィーネが仕事してた……だと……

「おかえりなさい」

「おかえり! 遅かったじゃない。お仕えはどうだった?」

「ただいま。いろいろと考えることが多い1日だったよ」


 家に帰ると、いつもの2人が出迎えてくれた。

 最近、こいつらの姿を見るとホッとしてしまう自分がいる。


「そう、まあ君は神族としてはまだまだ子どものようなものだし、これを機に神界のことを知っておくのもいいかもしれないわね」

「そうだな。そう思ったよ」

「……? なんかやけに素直ね」

「今日、リリアに叱られた」

「はあ? いったい何したのよ……」


 ――ぐ。

 なんというか、こいつにそれは言いたくない。


「そ、そういえば。この神殿にいる天使は、おまえがここ用に雇ったのか?」

「違うわよ。君に仕えたいって天使を募集したの」


 ……やっぱりそうだったのか。


「食事とか、そういうのはどうしてたんだ?」

「もちろんちゃんと面倒見てたわよ。私が連れてきたわけだし。……もしかして、自分で神殿を動かす気になってくれたのかしら」

「ああ。どうしたらいいのか教えてほしい」


 というかこいつ、本当に仕事してたんだな。

 しかも本来オレがやるべき分まで。

 ラテスの調査を言い訳にさぼってるなんて思っててごめん……。


「分かったわ。うち――あ、リエンカ家のことね。うちは名門神族だし天使の数も多いから、天使の居住棟を分けて食堂って形をとってるけど。でもここはそんな規模じゃないし、1階の奥に天使専用のスペースが作ってあるの。天使たちは基本的にはそこで生活してるわ」


 ――なるほど。

 あまり姿が見えないと思ったらそういうことか。


「食材は何でも出せるようにしてあるから、そこにある専用キッチンで好きに作って食べてるみたい。うちの食堂とも連携させてるから、同じメニューを食べることもできるけど」

「な、なるほど……」


 オレがやる場合は食堂が使えなくなるだろうし、それならフィーネに任せておいた方がいいんだろうか?

 いやでも……うーん。


「……あの子たちは、多少不便でも君が管理する方が喜ぶでしょうね」

「ええ? なんでだよ」

「ここの天使にとって、主は私じゃなくて君だもの」


 ああこれは。

 そんなつもりはなかったけど、でも。


「……今までずっと、オレはやるべき職務を放棄してたってことか」

「まだ時期じゃなかったってことよ。君は元人間の転生者なんだから、そんなに焦らなくたっていいのよ? 天使たちにもそれは伝えてあるし。焦って形だけ取り繕っても意味ないもの」

「……それ、リリアにも言われたよ」

「ああ、なるほどね。……まあでも、そういうことなのよ。君は少し完璧主義すぎるところがあるから、そんなんじゃいつか必ず挫折するわよ。それよりも、もう少し自分と向き合う時間を取りなさい」


 ――自分と向き合う時間、か。


「なんか珍しくおまえが名門神族らしく見えるよ」

「失礼ね! 私はいつだってれっきとした名門神族よっ!」

「あはは」


 正直、オレが前世で社会人として培ってきた常識は何だったのか、と思いたくなる状況に戸惑も大きい。

 そんな内面的なことより実務の方が大事では?と思ってしまいそうになる。


 ――でも、そうじゃないのがこの世界なんだよな。

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