第38話 水精霊が仲間に加わった

 フィーネが去ったあと、オレは【神様の飴】でスキル【召喚】を取得した。


「ハク、おまえはどう思う? 気になる候補者はいるか?」

「そうですね……精霊たちを呼び込むなら、先にした方がいいかもしれません」

「そうなのか?」

「精霊たちの力が加わると、鉱石力が強まって世界がより安定しますよ」


 なるほど。

 なら先に水精霊や風精霊を呼んだ方がいいのか?


「森精霊たちにも聞いてみようか」

「それがいいと思います」


 オレはグノー村の長老の家へと向かうことにした。


 長老の家に着くと、アスタが迎えてくれた。

 それに続いて長老も姿を見せる。


「突然すみません。少し相談したいことがありまして……今大丈夫ですか?」

「どうぞどうぞ」


 リビングのテーブルへと案内され、待っていると香りのいいお茶と押し花が飾られたクッキーを出してくれた。


「いい香りですね」

「ありがとうございます。ちょうど先ほど、シルヴァが持ってきてくれたところなんですよ。……それで、相談というのは」


 長老もアスタも席につき、話を聞く時間を取ってくれた。


「実は次に呼び込む住民の候補がいくつか出ていまして。人族を呼ぶ前に、精霊をもう少し増やそうと思っています」

「それはいいですね。水精霊や風精霊が増えると星の力がより高まります」

「森精霊とほかの精霊たちは、どういう関係性なんですか?」

「以前暮らしていた星では、水精霊、風精霊と共存していました。私たちはできることが違うので、協力し合う形になると思います」


 派閥ができたらややこしそうだと思ったが、どうやらその心配はなさそうだ。


「それを聞いて安心しました。人族を呼ぶ際には、オレも細心の注意を払います」

「お気遣いありがとうございます」



「……というわけで、先に水精霊と風精霊を呼ぶことにしたよ」

「はいっ!」


 オレはスキル【召喚】を習得し、フィーネに言われた方法で、まずは水精霊を召喚した。

【神様用の飴】もそろそろ買い足さないとな。


 ――ええと。森精霊が召喚された時のことを考えるともしかして。

 何となく嫌な予感がして、オレは急いで川沿いに出て周囲を見回した。


 するとそこには、びしょ濡れ状態でぽかんとしている水精霊8名の姿があった。

 藍色の髪をした美しい男女で、水色のサラサラとした不思議な質感の服を着ている。


「す、すみません! 大丈夫ですか?」

「……ええ。あの、ここはいったいどこでしょう? わたしたち、死んだんでしょうか?」

「いやいや、生きてますよ。ええと……ようこそ我が領地へ?」

「……どうも。あなたは?」

「オレは神乃悠斗と申します。この地を管理している者です」

「……神様? ということは、わたしたちは召喚されたのでしょうか?」

「え? あ、いや、ええと……神乃悠斗は名前なんですが、まあそんな感じです」


 名前のせいで、またしてもカミングアウトしてしまった。

 が、森精霊の時ほどの反応はなくてほっとした。

 どうやらカタログに書かれていた「自由を愛する、穏やかな性格」というのは本当らしい。


「……あら? 何か力が回復していきます。ここは豊かな土地なのですね」

「本当ですわ。毒素が消えていくのが分かります」

「これはすごい……」


 水精霊たちは、自分たちの体に流れ込んでくる強い力に驚き、感動している。

 どうやら相性は問題なかったらしい。


「元いた世界では、水質の悪化で浄化が追いつかず、絶滅の危機にあったと聞いています。よろしければ、この星の住民になっていただけませんか? 今、まだ森精霊がいるのみでして……」

「……ここに住ませてくださるのですか?」

「嫌じゃなければぜひ」

「! 助かります。生まれ育った場所を愛していましたが、おっしゃる通り、あの場所はもう……」


 水精霊たちは、悲しそうな表情を浮かべて俯いてしまった。


「できるだけ快適に暮らせるように、こちらもできることがあればお手伝いします。これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」


 こうして、水精霊が仲間に加わった。

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