第24話 初めての来訪者は突然に

 ハクとともに音のした方へ向かうと、そこには何やら煙を上げている謎の物体が刺さっていた。


「……巨大な蕾? ハク、これ何だか分かるか?」

「詳しいことは分かりませんが、恐らくは別の世界から来た方々かと」

「は!?」


 え――っと、これは何だ? 侵略者か?

 いやでも、これどう考えても着陸に失敗してるよな……。

 蕾は花びら側が下になって刺さっており、中から何やら声が聞こえてきた。


「あれ? 開かないっ!?」

「今ので故障しちゃったのかな」

「誰か……誰かいませんか……」


 どうやら何らかのトラブルでここに落下し、地面に突き刺さったことで扉が開かなくなっているらしい。

 中からは、複数の声が聞こえている。


「ご主人様、どうしますか?」

「うーん……まあ困ってるみたいだし。ハク、頼んでいいか?」

「はいっ」


 ハクは人型になって近づくと、蕾に抱きつくような形で手を回した。

 巨大な蕾は直径何mもあるため、ハクの手の長さではまったく足りてないように思えたが、それでもどうにか地面から引き抜くことに成功した。

 その間、中からは絶えず混乱しているような声が響いていた。


 ハクが蕾を地面に置くと、花びらのうち一枚が花開くように動いた。

 そして――中から黄緑色の髪をした小さな生き物が次々と飛び出してくる。

 生き物たちは、互いに抱きしめ合ったり泣き出したりしながら「助かった」「もうだめかと思った」と無事を確認し合っていた。


 が、オレとハクに気がつくと顔色を変え、緊張した様子で静まり返る。

 この蕾から出てきた生き物は、みな30㎝程度ととても小さい。

 向こうからすると、オレやハクは巨人のように見えているだろう。


「え、ええと、あの……あなたたちはいったい?」


 どうしたもんかと悩んだ末、オレはとりあえずそう聞いてみた。

 向こうに敵意はないみたいだし、それならこちらも敵対する理由はない。


 しばらくすると、その中から長老と思われる白髪の老人が前に出た。


「あなた様は、この星のお方でしょうか?」

「ええと……まあそんな感じです」

「そうでしたか。突然驚かせてしまい申し訳ないことをした。私たちは、別の世界で森を守ってきた森精霊という種族じゃ」

「なるほど。それで、いったいなぜこの星に?」

「それは……」


 長老は、そこまで言って黙り込んでしまった。

 他の精霊たちも、表情を曇らせて俯いている。

 何やらただならぬ事情があるようだ。


「こちらに敵意はありません。よろしければ、ゆっくりお話しませんか? ここから少し行った先に、オレたちが暮らしている家があります」

「……分かった。すべて話そう。おまえたちは、しばらくその中で待っていなさい」


 長老にそう促されると、森精霊たちは静かに頷き蕾の中へと戻っていった。

 蕾が再び閉じられたのを確認し、長老は再びこちらを見る。


「それでは、案内をお願いできるかな」

「はい。ハク、頼めるか?」

「はいっ」


 ハクは再び狼の姿になり、姿勢を低くする。


「な、なんと――! あなた様はいったい……」

「あはは。とりあえずこの子――ハクに乗って移動します」


 オレは長老とともにハクに乗り、ログハウスへと向かった。

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