あなたに逢えて好かった

₍Ꙭ̂₎

第1話

―あれは君が転校してきた日だ。

君の自己紹介は今でも鮮明に覚えている。

下を向いて教室に入って来たかと思うと、

ぱっと顔を上げた。そして、にこりと太陽の

ように笑って言った。

「初めまして!成瀬 です!

 今日からよろしくお願いします!」

パチパチと乾いた音がしたかと思うと、

次々と同じような音があちこちから聞こえてきた。みんなが、君に拍手を向けていた。

こんなことが起きるのは僕にとって初めての出来事だった。

その日から君はクラスの人気者だ。

部活も始めたようで、他のクラスの人とも

仲良くしている様子がよく見られた。

しかし、体育の様子を見てみると運動が苦手らしくバレーではパスをミスりまくり、また、リレーではバトンを落とす。これでは、みんなが冷たい目で見ても仕方がない。

そう思っていた。

でも、君はそんなこと気にせず本気で頑張った。

そのおかげか、君が嫌われることはあまり

なかった。


―君が転校して、3ヶ月がたった頃、僕たち学生の本業である勉強の成果をはかる時期がやってきた。‥所謂定期テストである。

君は毎日授業中は寝ているし、よく教科書を忘れては先生に怒られていた。

僕はそんなこと気にしないようにしていた。家に帰っては勉強をしたり、弟に勉強を教えたり、本を読んだりして過ごしていた。

どのように過ごしても、時間は平等に過ぎていくのだと父に言われたことを思い出した。


そして、テスト本番がやってきた。

1日目は、古典、数Ⅰ、家庭科。

僕は、文系でも理系でもないのでどの教科が

得意というのは分からない。古典、数Ⅰは

まぁよくできたと我ながら思う。家庭科は

マークシートなので楽勝である。

これで、1日目は終了。半日で終わりなので

家に帰って明日の勉強をしようとしたら、

ついつい寝てしまい母に起こされた。

それから、いつも通り過ごし勉強は明日の朝

やろうと思い寝た。


―2日目

‥失敗だ。いつも通り起きた僕は、朝の勉強は学校ですることになった。早く起きる予定だったのに。

今日は、物理基礎、現代社会、音楽美術。

最後の音楽美術は苦手なので諦めている。

他2教科は1日目に続き良い出来だ。

明日は、難しくない教科なので今日は

復習を少しするだけにしようと決めた。


君は、大きな声で

「えっ⁉あそこは答えアでしょ!

 (教科書で確認)あぁー!ミスった‥」と

嘆いていた。どうやら、他にも数ヶ所違う

答えを書いていたようだ。残念としか言いようがない。


―3日目

今日は、寝覚めがいい。とても気持ちの良い朝だ。ゆっくり朝食を食べ、早めに家を出ることにした。時間があるので、いつもと違うルートで学校に向かった。

その途中、駅から歩いてくる君に出会った。君はあのときのような笑顔で笑いながら、

「おはよー!珍しい(?)ね、こっちは

 どうせだし、一緒に行こ!」

「あぁ、別にいいよ、僕は」

「じゃあ、学校までよろしく!」

こうして、僕らは一緒に学校に行くこととなった。

僕は、そういえば初めて話したなぁと

考えていた。

「ここの学校テスト難しくない⁉

 あっ、でも音楽美術は楽しかった!

 えっと…どうだった?」

「平野 千寿だよ。呼び方はご自由に。

 まぁ、いつもと同じくらいだと思うよ。」

「そうなんだ!平野さん!

 あっ、成瀬でいいよぉ、ふ、ふぁ〜」


‥成瀬さんは寝不足らしい。話を聞くと、最近アニメを見ているそうだ。とても面白いから見てと言われたが長くて覚えられなかった。それから僕は、成瀬‥さんの話を聞いていた。

「学校、着いたね。

 じゃ、テスト頑張ろうね」

「ラスト1日頑張るぞー!」

こうして僕らは別れた。いつもより少し遅く

学校についた。しかし、嫌とは思わなかった。

ちなみに科目は、英語、生物、国語だ。

いつもより難しいと先生は言っていたが、

いつもくらいだと思った。


次の日、学校は休み。

僕は家でアニメを見ることにした。

しかし、弟が「参考書がほしい!」と言い出したので、本屋について行った。

「数学の中学生のやつ!なるべく

 馬鹿でもわかりやすいの!」

難しい注文をしてくる。2、3冊選んだもの を持っていくと気に入ったものがあったようで会計に行った。

弟を待っていると成瀬さんに会った。

「あっ!昨日ぶりだね平野さぁぁああ!」

「どうしたの?」

「す、す、スカート!?えっ?

 女の子でいらっしゃいます??」

「?あぁ。制服は親戚のお下がりなんだ。」

「そうなんだ!私服可愛いね〜」

「あ、ありがとう。」


―僕は、よく男の子と間違われる。

あっさりとした話し方、『僕』という一人称

のせいだろう。それも、偏見だろう。

【男はこうあれ!女はこうあれ!】という。


「ただいま!あれ?彼氏?笑」

「違うよ。同じクラスの人。」

「え!友達じゃないの? 」

「ふぇっ!?何いって、えっ?

 ま、またね!行くよ!」

思わず赤面してしまった。うぅー、

恥ずかしいな。

「平野さん、可愛い‥」

成瀬もまた、口を抑え赤面していた。







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