君の手招きに誘われて..

わたくし

第1話 初めまして始めました。

 矢島照16歳。家族構成は男2人の女1人。そして犬が1匹だ。ウチは両親が共働きなので、家に帰れば温かい食事や風呂など待っていない-自分で温め、湯を張り、、鍵を閉め、、、眠る-そんなイエの子だ。

 だが妙なことに外から見た我がヤはまるでボクの帰りを待っているかのよう、換気扇から油の匂いを振り撒き、『ここは温かな家庭ですよ』と言わんばかりの自己主張。今日のイエはまるで家だ。ここは自分の帰るべき場所だったのかと表札を何度も確認した。間違いない、ここは誰が何と言おうと“矢島”さんちのようだ。では、なんだ、。そうか、中にいるのはうちの母かとも考えた。だが夜勤のはず、予定に反したことなんて一度もない。夜勤なら夜勤、休みなら休み。ましてや明かりが点いてるはずないじゃないか。とニヤリと笑ってやった。なら今度は父か、最後に顔をまともにみたのはいくつの時だっただろうか。考えるまでも無かった。

 そんな自己問答をしていると中から人が出てきた。まじまじと互いに存在を確認し合った。それは少女と言うには大人びており女性というには少し違う。長身で姫カット、神様が右手を使いどんな人間よりも時間掛けて描きましたと、創造者の意図すら感じ取れる美しさ、すらっとしており胸はない、この絶壁もあえてそう為されたように見えなくもない。そんなことを反芻していると。彼女が先に口を開いた。

『おかえり、』

『ただ、ただいま。』

普段言い慣れていない言葉は滑らかには出ないものだなと、ベストを巻き込むようにネクタイを掴んでいた。そんなことより、今ここで、僕を出迎えたこの声に。僕は聞き覚えがあった。

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