3話

思い足取りで、家へ向かう。

恐らく家にいるのは母だけだろう。父はいつも夜1時頃帰ってくる。

でも母の方がヒステリックが強いからなぁ…

恐らく殴られるだろう。

あぁ、もう家へ着いてしまった。

怖い。絶対に怒られる。

でももうここまで来たんだ。

警察に捜索届けを届けられるよりマシ。

震えた手でドアを引いた。


帰って来た私を迎えたのは母の平手打ちだった。

「こんな時間まで何をしていたの!」

「…ごめんなさい。」

また殴られた。

「全く!!いつから夜遊びなんてする子になったの!」

「ごめんなさい。」

「はぁ…これはお父さんに言いますからね。」

まずい!!父は怒ると手がつけられなくなるほどに暴れ、私を好き勝手する。

「そ、それはやめて!!お、お父さんにだけは!」

「うるさいわね!!貴方が悪いのよ!」

あぁ、駄目だ。ヒステリックが加速した。


母に蹴られた。思わず体が傾き倒れる。

母はそんなことお構い無しに私をどんどん蹴る。

「あんたが…やっぱり…」

鬼の形相をしながら何かブツブツとつぶやく母。

「…何が間違いだったの…?」


「お母さん…?」


「その名前で呼ばないで!裕花!!うるさいわよ」

「やめてよ!!」


倉崎裕花。それは汚い親に無理矢理付けられた汚い名前。大嫌いな親に付けられたこの名前が、私は大嫌いだ。

「やっぱりあんたなんて、産むんじゃなかったわ」


その時、私の心が割れた気がした。

今まで存在を否定されることはあったが、産まなきゃ良かった、と言われるのは初めてだ。


すると母は満足したのか、私を一通り蹴り、殴るとふらふらとリビングへ消えてった。

私は一目散に2階の自分の部屋へかけて行き、部屋に入るとドアの鍵を掛けた。

悲しくもなんともないのに、涙が溢れる。

私は嗚咽を漏らしながら、彼の事を考えていた。

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