「普通」の定義
たとえば体重が20㎏も減ったなら、あきらかな変化が見た目に現れる。
初対面でもないかぎり、その変化に気がつかない人はいないだろう。
痩せた本人も、鏡を見ることで見た目の変化を実感できるはずだ。
だが、半年もすればそれが普通になってしまう。
痩せて変化した姿ではなく、見慣れた普通の姿になってしまう。
適性体重より20㎏以上も軽くて、
あきらかに普通の姿ではなかったとしても。
少なくとも僕の場合、太っているようには見えなくても、
極端に痩せているようにも見えない。
鏡を見ても見慣れた姿が映っているだけで、
そこに何らかの問題を見出すことはできない。
ただし、何も問題がないと思っているわけではない。
数百グラム増えただけでも太ったと感じたり、
気がつけば痩せることばかり考えてしまっているからだ。
外見だけでなく内面にも問題があるのは間違いなく、
いまの自分が普通の状態にあるとは思っていない。
では、外見の変化がまったくない場合はどうなのだろうか。
内面に問題があったとしても、
そのことに気がつける人は一気に少なくなるはずだ。
見た目だけでなく言動にも変化がなければ、
本人以外は誰も気がつかないだろう。
もしかすると、本人でさえも気がつけないかもしれない。
あまりにも見慣れすぎているだけで、
鏡には映らない姿が「普通」とは違っていたとしても。
蝕んでいくような変化は日常に溶けこみ、
当たり前となって僕らの目を曇らせていく。
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