番外編   死神グルナは死神を辞めて自由に生きます

1   逃亡


 最愛の妹の魂の持ち主であるヘーネシスの言いなりになり、皇太子のレオンが1000年も魂を追いかけていたアリエーテを誘拐して、その魂を消し去る企みが見つかり、共に生きたいと思っていた妹の魂を持つヘーネシスを殺して、その魂を貪った。


 捕らえられたグルナは、契約していた妹の魂が大量殺人を犯しても、その魂を死神協会に連れ行かずに消滅させた罰と殺人教唆の処罰で、この世から抹殺される事なった。


 牢獄に入れられたグルナは、最後に食べた妹の魂のあまりのまずさに、食中毒を起こし、牢獄の中で、寝込んでいた。


 一度も外したことのない、赤いネクタイを外し、魔力で妹の形見の赤いネクタイを消し去った。もう妹は転生しない。自分と今共にいるのだと思えば、多少は慰められる。この高熱が治まれば、グルナは殺される。


 殺されるなら、寝込んでいる今のグルナを殺せばいいのに……人情に溢れた元上司の命令をあざ笑った。


 牢獄の見張りは、後輩の死神だ。



「すまない、ニリア、水をくれないか?」


「分かりました」



 従順な後輩は、瞬間移動で姿を消した。


 グルナは高熱を出していて、とても動けないのだと思われているようだ。


 意識を集中して、グルナは牢獄から抜け出した。


 高い魔術を持っていなければ、死神にはなれない。グルナもそれなりに魔術に長けていた。


 リニアに気付かれる前に、グルナは瞬間移動を繰り返した。


 取り敢えず、どこでも良かった。


 妹の魂の持ち主だったヘーネシスは、いろんな所にアジトを持っていた。


 そのアジトの一つに潜り込んで、自分の魔力を消して身を隠した。


 動けないはずのグルナが姿を消してニリアは焦って、死神協会の所長に報告した。


 抹殺させると、現魔王のレオン様と約束していたのに、グルナを逃して、死神一同で捜索を始めたが、グルナの所在を見つけることができない。


 本来の魂の回収もしなくてはならなくて、グルナの捜索の人員を減らすしかなくなった。


 人員を減らせば、ますますグルナをこの世から探し出すことは難しくなる。


 死神協会の所長は、首をはねられるのを覚悟して、レオン様に、グルナの逃亡を報告に行った。



「必ず探し出して殺せ」



 レオン様は底冷えのする魔力を隠しもしないで、そう言った。



「最善を尽くします」



 死神協会の所長は魔王のレオン様に、頭を下げた。


 グルナの捜索に、半世紀が過ぎたが、グルナの所在は見つからない。


 魔王は妃に手出しをされた時点で、死神協会を壊滅させてやると宣言した。


 死神協会から、魔王の妃、アリエーテ妃の護衛に派遣を出すことにした。


 アリエーテ妃には、お子が十人ほど生まれ、レオン様と同等の魔力を持つ、後継者にしてもいいと言われているお子も生まれている。アリエーテ妃はまた身籠もっている。


 元が人間なので、魔術は使えないが、聖女の力を持ったアリエーテ妃は、魔族の間でも新しい病気の治療法を広めた尊い妃と言われている。


 レオン様もアリエーテ妃に、たえず護衛をつけているようだが、死神協会からも護衛を派遣することで、今は許してもらっている。


 早く、グルナを見つけ出さなければ。


 間違っても、アリエーテ妃に手出しだけはさせるなと、部下に命令をしている。所長は胃の痛む日々を過ごしている。


 それにしても、何故、グルナは逃亡したのだろう?


 急に命が惜しくなったのか?



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