第3話 600年前
☆
600年前に、またアリエーテの魂の気配を感じた。
どうやら200年おきに転生しているようだ。
今度は5歳のアリエーテを見つけた。
まだ幼く愛らしい顔をしている。瞳の色はやはり美しい青色だった。
両親は貿易商を営んでいた。
一人っ子のアリエーテは、両親に溺愛されていた。
そんなアリエーテに、レオンは声をかけた。
人間はほんのわずかな事で死んでしまう。それなら契約をしておきたかった。魂を縛ってしまえば、死ぬことはそうそうなくなる。けれど、アリエーテは、大人のレオンを恐れた。
顔を見るなり泣かれて、泣き声を聞きつけた母親が走って来た。レオンは身を隠すしかなかった。
5歳のアリエーテは幼すぎた。
レオンには見守ることしかできなかった。
適齢期になったら求婚しようと思った。
貿易商を営んでいる両親に連れられて、アリエーテはよく船に乗り他国へ赴いていた。
ふたつの世界を行き来し、珍しい景色や物に目を奪われ、いつも目を輝かせていた。
ただ極度の人見知りで、人に話かけられただけで体を強ばらせ、愛らしい笑顔は泣き顔に変わる。
10歳頃になると人見知りは、徐々に収まり、行商人の娘らしく両親の手伝いをする働き者の娘に育っていった。頭も賢く、計算は速かった。
日々美しく育って行くアリエーテに、レオンは再度声をかけた。
アリエーテに、拒絶はされなかった。
会いに行くたびに花束を贈ると、アリエーテはいつも頬を染めて花束を受け取っていた。
しかし、アリエーテの両親はレオンを嫌っていた。まだやっと10歳になった娘にちょっかいをかける不審な男としてマークされた。
レオンはアリエーテの両親に会わせてもらえなくなった。アリエーテも両親に注意を受けたのか、レオンが花束を持って会いに行っても、花束は受け取ってもらえなくなった。
レオンはひどく落胆した。
目の前に愛おしいアリエーテがいるのに、アリエーテに拒まれてしまう。
このまま攫ってしまおうかと考え出した。
魔力を使いアリエーテの両親の動きを止めたら、アリエーテは両親が死んだと思い狂ったように泣くと、自分の胸を店先にあった剣で貫いた。急いでアリエーテの治療をするが、心臓の治療は難しく、まだ幼いアリエーテの血液量では治療まで持ちこたえることができず、結果的にレオンがアリエーテを殺してしまった。
血で汚れたアリエーテを綺麗に清めて、美しい白いドレスを着せて両親の元に戻した。
アリエーテの両親は、美しいが命を失った人形のようなアリエーテを見て、嘆き悲しんだ。
ささやかな葬儀が行われ、アリエーテの亡骸は火に包まれた。
近づきすぎてはならない。
アリエーテの愛する者をアリエーテから遠ざけてはならない。
この時代のアリエーテからは、その事を学んだ。
レオンはまたアリエーテの転生を待つことにした。
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