第3話 脱走
☆
翌朝、アリエーテがいないことに気付いたシスター達は、騎士に聖女の脱走と知らせた。
国を支える騎士達が、アリエーテの居場所を探し始めた。
アリエーテはただ道を歩いていた。
行き場所が分からない。
墓地に行きたいが、どこに墓地があるか分からない。
ただ足を前に出しているだけだった。
歩いているアリエーテの横に漆黒のタキードを着た男が並んで歩き始めた。
「美しいお嬢さん、どこに行くんだ?」
アリエーテはチラリと横を歩く男を見て、何も答えず、ただ真っ直ぐに歩いて行く。
「行き先は、この先、真っ直ぐか?」
「……」
「この先には海があるぞ」
海があるのかと、やっと自分が目指している場所が分かった。
「その海に飛び込むのか?」
アリエーテは微笑した。
それもいいかもしれない。
「おっと、自殺を勧めたら規約違反か」
男は一人で話している。
「死神がいなければいいが」
「呼んだか、レオン殿。その獲物は俺の物だ」
タキシードの男の横に、髪の長い男が並んだ。やはり黒いスーツを着て、ネクタイは真っ赤だ。なんと品のない服装をしているのだろう。
タキシードの男はレオンと言うらしい。
「グルナかよ。魂の回収にはちょっとばかり早くはないか?」
「キザな悪魔の姿が見えたから、ここは早めに挨拶をしておいたほうがいいかと思ってな」
赤いネクタイの男はグルナ。魂の回収というからには、死神か何かだろうか?
レオンは悪魔らしい。
どっちも会いたくはない相手だ。
アリエーテは二人を置き去りにするように、歩みを早めた。
「おい、ちょっと待て。おまえはお尋ね者だ」
レオンがアリエーテの横に並ぶが、突然姿を消した。
「そこのお嬢さん。アリエーテ様ではございませんか?」
警棒を持った騎士二人が、アリエーテを左右から囲んだ。
「アリエーテ様ですね?」
「違うわ」
「その衣装は聖女様の衣装ですね?」
「……」
アリエーテは騎士に捕まった。
両親にも会えずに、どこにも行けずに、呆気なく騎士に捕まり、馬車に乗せられた。
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