おばあちゃんは異世界転生したらしい!とりあえず老眼鏡貸してくれんかのぉ?
しず。
第1話
86歳という若さで永眠した。病死は癌
3年前に膵臓癌が発覚し、手術を行い無事成功。家族全員で安堵し、祝いに外食でお寿司を食べに行ったのはいい思い出だ。
気付けば心臓、脳、大腸。癌に侵され、吐血するまでになっていた。
苦しかった、辛かった。そういった記憶が一切ないからきっと緊急搬送されている途中で眠りについたのだろう。良い人生だった。可愛い娘に、可愛い孫
感情の起伏は激しかったが私や孫には優しかった娘
趣味に没頭して彼氏が出来なかった孫
3人で暮らした思い出は胸を温かくする
そうそう。孫の影響か私も色々詳しくなったのよ
単語だけなら詳しいんだからね?そうね、ええっと…お胸がない女の子はぺちゃぱい。粗末な息子はそち◯。顔を出して配信するのがユーチューバー。写真映りがいい事を映える。遊び人の事をビッチ。女の子達がイチャイチャしている事を百合。夢が詰まった独身者のことを魔女。彼女が居た事ない男性は間違いなくどうて…こほん。
私、案外物知りさんでしょ?
ところで…これは何ていう現象なのかしら
「お嬢様、おめでとうございます!光属性です!」
手元でキラキラと光る粒子。空気に色が付いたような、粉を振ったような光景に周囲が歓喜した
確かに私、山田タエ子は病死した筈だった
けれどどうだろう。気付けば3歳の誕生日、
屋敷で開いた豪華なパーティー。好きな食べ物に囲まれて、沢山の人達からプレゼントを貰っている
私…生き返った?
いやいや、それよりももっと最高じゃないだろうか
垂れて落ちたおっぱいは垂れる事がない。だって胸自体が無いのだから下に落ちる心配がない
シワシワの手も、ハリが張っていて手の甲を摘んでも皮がすぐ元に戻る。あれね、脱水症かどうかで手の皮を摘んだらいいって聞いた事はあるが…
しわしわな手を摘んでも直ぐには戻らない
手を摩ってやっと元に戻るのだ。
でも今の私は、つやつやな肌に真っ平らな胸
ちっこい背に。今から育つ身体。つまり…、
孫が言っていたあれじゃないだろうか、
『異世界転生やってしまったわい』
腰が痛いと嘆いた日々。湿布と整体にお世話になった事も多々あった。側を通れば湿布くさい、と近所のくそが…いや、子供に笑われたものよ。
さて、ここで問題が何個か発生するわけで
口調がおばさんっぽくなるのはまぁ良いとして。手の中の何かが光ったのも、どうってことは無い。転生してしまったものは致し方ないとして、
しょんべん…いや、お手洗いはどちらかの
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こほん。先程は失礼いたしました。人間の第三欲求には勝てないのが悔しいです。ぴえん。
前世を思い出し、今世の記憶もちゃんとある
今日でなんと三才になった私の名前は瀬戸 優羽
ヨーロッパ風の世界観ではなく、私が生きていた日本に外観は近いが唯一異なる事があり…
それが魔法である。あ、私、優羽は光属性で治癒が使えるらしい。やったね当たりくじではないですか
つまりうっかり角で親指をぶつけても、
うっかり包丁で指を削ぎ落としても、
即完治!何これ超絶便利ではないですか。おばあちゃん感動よ。
で、私の立ち位置はどっかの財閥の良いところのお嬢さん…らしいのだが、
私の家族、周囲の人間を含め全て『美』という言葉が綺麗に当てはまる。両親はこの世の物とは思えぬご尊顔で眩しい程に美しい。そして私のお世話がかりのお兄様方も、歩くイケメンでがちがちに固められていた
トイレ以外はずっと一緒でプライベートもくそもない
「お嬢様は光属性の持ち主。喜ばしい事ですが…今後が心配です」
「きっと誰もがお嬢様を欲しがるのでしょうね」
おうおうおうおう。3歳児を褒めちぎるんじゃないよ、調子に乗って反抗期が早く来たらどう責任とってくれるんだい?まぁ、確かにあの煌びやかな両親から産まれたせいか、多少愛嬌はあるかもしれんが…
どっちかと言えばブサイクかもしれんのぉ
唇は小さく、早食いするには不便そうだ。小さい鼻はマスクを付ければきっとずれ落ちてくる高さ。問題はそれだけではなく、この瞳である。
どこからどう見ても黄色で、角度を変えても変わらない。よく言えば黄金色だが、私がいた日本で黄色がかった瞳は勝気と言われていた。なんてこったい、瞳が全て私の性格を物語っていらっしゃる
自身の容姿にがっかりしたものの、周りが私にちょろいから…ま、いっか。私がうっかり誰かのへそくりを#くすねた__いただいた__#としても。うっかり誰かの印鑑を使って悪用したとしても。うっかり、実家の鍵をなくしてしまったりしたとしても、
きっと許してくれそーなほどには、ここの人間は甘い
さて。そんな話しは置いといて、
孫から聞いていた異世界転生には様々なジャンルがあるという。動物に囲まれて日々を過ごすスローライフ、悪役令嬢が正ヒロインにざまぁする物語。成り上がってダンジョンクリアを目指す冒険ライフ。
後半のダンジョンクリアは、主人公が大抵男性ということで私がその世界に転生した可能性はないだろう
運がないのはこの世界にまったく見当がつかない事だ
さてさて。どうしたものか…、
あぁ、だが全くヒントが無いわけでもない。何故なら転生したこの世界が全てヒントとなるのだから
例えば、男が居ない世界なら百合。つまり同性婚が許された世界だと分かるし。獣人が居れば、ファンタジーな世界だと知れる。この世界を知れば知るほどどのジャンルの世界に産まれたのかも、おのずと分かるというわけだ。
と言うわけで、周囲の人間を観察してみた結果。
「お嬢様の事は我々が命をかけてお守りしますね」
私の頭をそっと撫でるお世話係のお兄ちゃんズ、パート1と。
「物騒な事を吹き込まないでください。そういう事が起こる前に先回りして片付けるのが常識ですよ」
パート1に呆れたような視線を投げかけ、私を抱っこするお世話係お兄ちゃんズ、パート2
壊物を触るかのようにそっと慎重に、背中を撫でられ。とんとん、と一定間隔でたたかれる
今私に話しかけたパート1も、私を抱っこしているパート2も無駄にキラキラとした雰囲気を持った美男子達。それだけでは飽き足らず、茶菓子を持ってきた給仕係のお兄様方達も何処ぞのアイドル…いや、男優、いや、抱かれたい男たちランキングがあったら上位を全員でぶっちぎる顔面を持っていた。
ふむふむ。イケメン、良い身体、いい環境、そして魔法がある世界。なるほどな。もしかしなくてもこの世界のジャンルを早くも見破ったかもしれん。
ここは間違いなく#穴掘り__BL__#ゲームじゃな!!!
おばあちゃんは異世界転生したらしい!とりあえず老眼鏡貸してくれんかのぉ? しず。 @sizu06
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