エデス冒険譚

@marinterasu

【第一話】出会い

 彼女は国境を越えて、その街にたどり着いたのは、五日後だった。街の守衛に聞いて、街に足を踏み入れる。地図は渡してもらった。それでたどり着くかどうか、解らない。

 ただ背負ったずた袋と、夏用の服、腰の銃と取り合わせは奇妙だった。そして、その金髪碧眼も。

 これは実はそれほど珍しいものではない。特徴的には、このエデスの、クラート王国にはよくあるものだ。そしてここはカルナの街。だから彼らとの出会いは、ある意味では偶発だった。

 だけどそれはこの時には解らない。彼女はただ、周りの看板を見て、宿を探すことからしなければならない。


 ふと通りの反対側から、彼はその少女を見た。同じ通りを歩く彼らの出会いは、必然であり、偶然であった。彼はその姿を見た瞬間、傍にいた青年の外套を引っ張った。

「お前、危ないだろうが。転んでケガでもしたら、仕事がぱあに……何見てんだ?」

「あの少女だよ。ちょっと変わってると思わない?」

「どこがだ? よく見る特徴だぜ? ……って、この真冬に、真夏の格好をするか? 普通」

「だから言ったんだよ。気にならないかって」

「そこまで言ってねぇよ」

「そうだっけ? ね、兄さん。あの子見てようよ。何かあると思うんだけど?」

「あの胸のプレートか?」

「そう」

「……様子見っか」

「ありがと」

 彼は兄に礼を言って、少女の行動を見始めた。


 少女はそんなことは知らない。きょろきょろとして、悪く見れば不審者だ。それでもやめない。その少女の肩が、不意に軽くなる。瞬間、誰も解らなかっただろう。はみ出し者が、倒れるまでは。

「相手見てよ」

 それぐらいは言えるのだろう。彼女は自分の荷物を取り返すために、左腰の銃を抜き、素早く充填。それを打ち放った。というのが真相だった。

「すごいね、君」

 彼女が荷物を取ろうとした瞬間、その声が聞こえた。それは瞬きもあるかという、その一瞬。そしてこの時の彼女の行動も早かった。素早く左腰に銃を収め、右腰の銃を抜き放った。

 青年に突き付けられた右手の銃。だけど誰もそれを認識できなかった。周りからは、当然疑問の声が上がるが、少女の左胸のプレートを見て、誰も声を惜しんだ。

「あなただれ?」

「ごめん、今は名乗れないんだ。街中では、名前を呼んではならないことになってる。それよりこれ、君の荷物でしょ?」

「そう……だけど、あたしもいい加減不審って言われるけど、あなたもそうだよ」

 これは憶えながら言葉を発してるな。

 青年はそれに気づいた。周りが言う言葉を、彼女は瞬間的に憶え、話している。普通ではできないことだ。

 その青年の青銀の髪に、拳が振るわれた。彼は頭を抱えて、うずくまる。

「このバカ、敵作んなっていつも言ってだろうが」

「作ってないでしょ。ただ荷物拾ってあげただけでしょ?」

「相手はそう見てねぇし、俺は寒いわ」

 青年の言葉に、もう一人の青年は、仰ぎ見て、確かにそうだと思った。半袖のシャツに、魔法を放つ、二丁の銃。そしてさらには重いずた袋に、夏用のスカート。日焼けを防ぐ外套。どれも真夏の格好だった。

 彼らはというと、冬用の長袖のチュニックに、セーターを重ね着し、それからさらに防寒のための外套だった。当然、少女の格好は異彩を放つ。

「で、君はどこに行こうとしていたの?」

「ここ」

 紙を出されて、青年達は顔を見合わせたのだった。

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