奇妙な掌編

はる

ンリンギの怪

 オリンギというきのこの存在を知ったのは、正月明けのことだった。テレビ画面にでかでかと映る、エリンギよりも大きな白い帽子。調べてみると、正式名称は王リンギらしい。まさしく王の風格。そして私ははたと思った。アリンギからリンギ族は存在しているのではないか? アリンギが一番小さく、イリンギ、ウリンギと続いていくごとに、傘はどんどん大きくなっていくのではないか? ではワリンギ、ヲリンギ、そしてンリンギは……。そこまで想像を巡らせ、私は恐ろしくなって考えるのをやめた。さて、仕事の続きをしよう。何事にも禁忌というものはある。


 その頃、ンリンギは長い長い眠りから醒めようとしていた。ああ、よく寝た。頭の傘の中の宇宙は問題なく稼働しているようだ。新星が生まれ、膨張し、やがては爆発して消えていく。この永遠なる循環。そろそろ終わらせてもいいかもしれない。ンリンギは傘に手をかけた。

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