バウラーの悲劇

清見こうじ

第1話 衝撃編

 最近、巷ではホットサンドが人気なようですね。

 かくいう、こーじーも、ホットサンド、好きです。

 我が家の狭いキッチンのレギュラー鍋置き場には10年もののホットサンドメーカーが鎮座しています。

 最近はパン以外も挟んで活用していますが、もちろん普通にホットサンドも作ります。

 

 さて。

 我が家のホットサンドメーカーは、「バウルー」のシングルです。


 こちらが販売会社のサイトです。

 http://www.italia-shoji.co.jp/bawloo.html


 なぜこのメーカーにしたのかと言うと、話は購入の数年前にさかのぼります。


 当時、こーじーが通っていた専門学校の近所に、小さな喫茶店がありました。

 カウンターと小上がり一テーブルだけの、10人入ったら満杯の、小さなお店です。

 老年のお母さんがほぼ一人で切り盛りしているお店です。

 一応旦那さんがキッチンの片隅でテレビを観ながら鎮座して、どうでも手が足りない時には食後のコーヒーを入れる程度のお手伝いをしていましたが。

 なので、このお店はメニューを選べません。ようは日替わりメニューオンリーです。

 和洋折衷の日替わりランチは、品数も多く食後のデザート(果物)とコーヒーがついて、めっちゃコスパもよい。儲け無いのでは? と心配してしまうくらい、ある程度良い食材を使っています。


(なぜ知っているのかというと、お母さんがすぐ近くの、地元でも信頼の厚いスーパーで食材を買っている場面に遭遇するからです)


 近所には、市役所やいくつかの会社があり、昼時には、そこの職員や市民がこぞって訪れるので、12時に行ってもお店は満杯です。

 お母さん一人で切り盛りしているお店なので、回転はよくありません。

 確実に入店するには、11時半くらいに、せめて正午前に行く必要があります。

 逆に遅らせて13時頃行くと、すでにランチは売り切れ終了していることがほとんどです。

 なので、運良く昼前の授業が空きコマだったり、午後からだったりする時が狙い目です。


 日替わりメニューはご飯ものがほとんどですが、たまにパンもあります(麺類はありません)。

 パン、と言っても、それはほぼホットサンドです。

「バウルーサンド」とメニューには書かれています。

 食パンにハムとチーズとトマトとピーマンとゆで玉子がサンドされて、ぎゅっと圧縮こんがり焼かれています。

 初めて食べた時、この世にこんなに美味しいものがあるのか、と感動しました。

(なので、私の中でホットサンドと言ったら、この中身の組み合わせが最上級です)

 そのうち、この「バウルーサンド」はモーニングメニューでレギュラーとなり、ランチで出る回数は減りましたが、朝イチ空きコマなら食べられるようになりました。


 で、何で「バウルーサンド」という名前かというと。お店のお母さんに聞きました。


「バウルーで焼くから」


 ……。


 後年、このサイトを見て、きちんと分かりました。

 https://www.bawloo.com/


 でも、卒業後、このお店に行くことが難しくなりました。まあ、別の町で就職したので、仕方ないです。

 平日休みの日に、出掛けていったこともありますが、まあ、年に一回か二回あるかないか、という程度です。

(ちなみに土日はお休みです)


 で、買いました、「バウルー」。

 挟みまくりました、食パン。

 中身は色々アレンジもしましたが、何挟んでも、だいたい美味しい。


 で、今に至ります。


 が。


 ある日のランチタイム。

 この日は食パンでなく、ちょっと固くなったロールパンを挟んで焼いていました。真ん中にチーズを挟んで、つぶして焼きます。美味しい。

 ですが、悲劇はこの時に起きました。


「パキン」


 ……こんなに明確に音が鳴ったのかは、定かではありません。

 多分に脳内変換もされているでしょう。

 いや、脳内変換後は「バキン!」かもしれません。

 

 そのくらい衝撃でした。

 バウルーは二枚の四角い鉄板が蝶番ちょうつがいでつながり、パンなどを挟むように作られています。取っ手に固定器具がついていて、多少厚くでもガッシリ圧縮できるようにできています。


 その、鉄板をつなぐ蝶番が!

 …………割れました。

 見事に、ポッキリと。


 ……まあ、10年以上も使っていたら、ね。

 そんな諦めの境地に至るほど、大活躍してくれました。

 これだけなら、「マイ『バウルー』、お疲れ様」というお話なのですが。

 それではタイトル負けです。


 話は、次代購入に続きます。

 「バウルー」は近所のお店では見つからなかったので、ネットで買いました。

 なので、今回も、まずは密林を検索。

「………は? 何だこの値段?」

 

 「バウルー」、ホームセンターで売ってるホットサンドメーカーよりは、確かに高いのですが、明らかに前回購入時より値段が跳ね上がっています。

 記憶が確かなら、当時の2.5倍ほどに。

 いくらなんでも、この値上がり方はないだろう?

 こういう時は、本家本元のサイトを確認!


「やっぱり、そうだよね(ホッ)」


 販売元の直営での値段設定は、記憶とほぼ相違ありません、が。

「売り切れ……」


 その後、様々なサイトをのぞいてみたところ。


 冒頭に戻ります。


 最近、巷ではホットサンドが人気なようですね。


 ……だからって!

 需要と供給のバランスを考えれば至極もっともなんだけど。

 近年の転売ヤーの暗躍の影響がこんなところにまで!


 バウルーに慣れ親しんだ、バウルーを愛する、通称「バウラー」としては、そう簡単に他のメーカーに鞍替えできないのです。

(ぶっちゃけ、他のメーカーのも高いし、安いメーカーは使用に不安もあり)

 

 一応、手で取っ手を押さえて、何とか焼くだけなら出来る。厚いものは無理ですが。


 しばらくホットサンドは、少なくともガッツリ圧縮サンドは食べられない………。


 ショックで寝込みそうでした(寝込みませんが)。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る