507話 魔法少女は善戦する


 とりあえず、ここからどうしよう。


 ラノスも効かぬ相手に、私は立ち竦む代わりに思考を働かせる。私に何を求めてるかなんて知らないし、なんとかしようという心意気を見せよう。


 ということで、空間魔法で結界破ってみた☆


 ユーチューブタイトルの定型文みたいなことを考えながら、ディメンションプレス(笑)を空間に放つ。


「……?効き目ないか。」

ちょっと予想を立てつつ、数歩後退する。魔神の攻撃は相変わらず止んでくれないのだ。


 物体は触れている空間に影響を及ぼす、か。空間魔法を影響させるためには、空間内に物体がいる必要がある、ってことか。


 なら、空間魔法が発動しない時は、それができてない場合ってこと。なら、何らかの妨害を受けてる。それは……


「おっと手が滑った。」

隕石が降っていた。結界をちょうどすっぽり収める形で、隕石が降っていた。


 手が滑ったどころじゃねえええええええ!これ死ぬ!死ぬってさすがに!


「魔法は禁止ね。ディスタブ。」

指をぱちんと鳴らした。確認程度にトールやらラノスやらを撃とうとするも、ステッキに魔力を供給する寸前で遮断される。無理やりやっても、効果は薄い。


「ううむ、これは死んだな。死にましたよ確実に。」

諦めるのが早いと思うかもしれない。そうだけども。


 いや、まだ諦めてはない。やろうと思えばいけるんだよ。その後の処理がだるいだけで……?あれ、空間魔法使えば良くない?


 頭の中で構図が生まれる。


 重力魔法で粉々に砕き、残りを空間魔法で潰す。流石に大規模の空間をごと潰すとかは無理だから、小分けに。(そんなことできたら星そのものを潰せちゃう)


 空を見上げて、赤色化した隕石を見る。空に照準を合わせ、全方向から重力をかける。


 圧縮だ。


 魔神が頷く。


「これでいい?」

空間を1つずつ潰していく。こんなめんどいことしないでも、普通に収納させればいいと思う。けど、多分ちゃんと壊さないとダメって言われそう。


「うん、上手く使えている。」

楽しそう。全く本気を出してなさそうなのは確かだけど、その実力は未知数だ。しかし、周りには7つの魂とかいう理不尽が浮いたまま。


「ねぇ。少しだけ本気でやってくれない?私も本気で行くから。」

「キミの体、今ステータス半減してると思うんだけど。」

「大丈夫。なんとかなる。」

「はぁ……一時的に治療するよ。」

魔神が再び指を鳴らす。体がポカポカしてくる。


「あ、治ってる。」

神って凄いなと少し思った。神への信頼度が上方修正された。


「少しだけ本気、だったな。本当に少し、1分くらいにしようか。」

「なら、私も持ちうる力を出すよ。」

「ほいほい。」

手首をぶらぶらとしてディスタブとやらを解除した。


「覚醒。」

服装が変わる。ボロボロのローブは何故か消滅する。ここだけは謎だ。


「一方的になったら、ボクは遠慮なくキミを殺す気でいくよ。」

「死にたくないから善処する。」

ここは初心に戻ってステッキを構える。エグい魔力が私の頬を撫でる。


「持ちうる限り、じゃない?」

「…………私が耐えられる分の力を使うよ。」

そう言った瞬間にエアリスリップ。足止め用の魔法だ。そこにトールを流し、時間稼ぎをする。


「重力世界。」

からのプレス。


「へえ。分かってるじゃん。」

魔神が据わった目で飛んでくる。あの拘束を逃れるとかすごい。やばい。


 もっと!もっと重力を!


 オラに力を分けてくれてきなポーズをとり、あれこれ無駄だわと神速で逃げる。上に。


「お、でも方向転換まで予想はできてない。」

「してるのそんなの!」

上に空間転移の門を作り出す。空間転移といえば門がセオリー。神速で上に飛んだ先に門ができ、魔神の離れた位置に配置。


 武器とかどうこう言ってらんない……近づいたら殺されそう!


 エスカーを取り出す。さっき作った門を再利用し、転移させて撃つ。じゃないと避けられる。


 この間約2秒。それほど熾烈な戦いだ。


 魔神はアホみたいな急転換と加速で私のさっきまでいたところに突っ込み、その瞬間にエスカーのトリガーを引いた。

 その隙に、私自身を別の空間に移動させて見えるけど攻撃は与えられないように一工夫。


「よし……」

なかなかに善戦できている。少し安堵の吐息が漏れた。


 理不尽すぎる相手には技を尽くしてもほとんど効かないんだよ。あの私だってそうだった。


 戦況把握のために視線を動かすと、魔神が避けている最中だった。ん?避けている?


 よく見ると、エスカーの弾丸が少し掠れているのみで、避けられている。

 魔神、こっちをみてる。片手を上げると、細長い杭のようなものが無数にできる。


「このくらい、防いで見せて。」

無慈悲な声が降り注ぐ。ついでに杭も降り注ぐ。


 え、ちょ、は?

 無理だって!


 再度ステッキに持ち変えると、身体激化フルで使って腕に力を込める。ひとつひとつが重い。重力で重みを増さないと弾けない。

 集中速度パワー全てが必要。何これ最終決戦?


 腕の可動域限界まで振り回す。エターナルステッキだ。


 もう腕が限界に近づき、ところどころ弾きミスが生じてきたあたり。


「はい、終了。」

今まで相手にしてきていた杭は消滅した。


「1分、お疲れ。」

「……………………あぁぁ」

重いため息が肺から抜けた。覚醒やら身体激化やらを解除し、痛む体を座り込みながら撫でる。


「どう、だった?」

「いや別にどうと聞かれても、ボクには答えようがない。」

「なんかひとつくらいあるでしょ。」

「人間にしては異常だ。現龍神にあるいは、といところだ。帝国にも十分太刀打ちできる。けど、創滅神となれば話は別だ。」

結界が消去された。私が最後まで破れなかったそれは、最も容易く瓦解した。


「こんな結界、見ずに解除できなければ手も足も出ない。文字通りに。キミはまだ成長が足りない。」

厳しいお言葉をもらい、苦い顔で俯く。


「そんな暗い顔をしなくてもいい。其方の底は未だ見えない。まだまだ先はある。1年後5年後10年後、まだ未来はある。」

「うるさい。先がないんだよ、もう。」

「未来は訪れる。現在の人間がそんなことを言うものじゃない。」

「ないんだよ。」

「エディ、これネタじゃない感じだ。」

魔神は視線を下げて人神を見る。


 まぁ、人神達はこの戦いの中心人物。というか、目的が創滅神を殺すことなんだし、関係あるから……話してもいいよね。


 それらしい言い訳を考え、口にする。


「5階で……」

ふと、脳がずきりと痛んだ。


 ほんとに話していい話?これはおふざけじゃない。私が全てを失って、そうならないために私が託した過去の未来。


 私はこれを、話してしまっていいのだろうか。


 一抹の罪悪感が目覚めた。それは徐々に脳を侵食し、私の思考は真っ暗闇。


「…………まぁ、少しだけ。」

聞こえない声で呟いた。重荷っていうのは軽くするためにある。きっと私もそう言う。


 可能性は少しでも上がったほうがいい。この世界を、私は救って欲しいんだ。なにも、自分な救う必要なんてない。


 この大きな大陸が破滅する危機に、私は一体何をすればいいか。それはもう決めたこと。やれることをやる。


「この大陸は終わる。創滅神の手によって滅ぼされる。」

「……正気か?余がいる前で……」

「一旦黙ろうか。」

ヴァルがその手のひらを小さな頭に乗っける。「子供扱いするなよ、同年代だろ」と悪態を吐く。


「で、どういうことか、聞かせてもらえるんだろうね。」

「うん、そのつもりだし。」

哀愁を漂わせすぎた。自覚しているので、引っ込める。まぁそんな簡単に引っ込むほど浅くないけど。


「一旦座ろうか。さっきは無視されたけど、今度こそ座って。」

ゲーミングチェアを指す。そんなのあったな、と今更に思い返す。


 ……この材質、絶対高いとこのだ。


 いらない情報を手に入れてしまった。

 遠慮なく腰はかけさせてもらうが。


「じゃあ、始めようか。今後起こる可能性の高い、未来話を。」


————————————————————


 お休みいただいてから、ものすごく遅筆が酷くなっております。現在泣きながら執筆し、今日の分まだ書けてないと血眼になって文字を入力しております。


 助けてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る