第十四話 大火❷
ウヤクの目の前に立つ男は炎に囲まれていても全く動じていない。
「思ってたより健康そうだな姫様、両腕無いのは気の毒だがよ」
タイカは常に口角を上げながら話している。
「また私を殺しに来たのですか」
「またとはどういうこった、初対面だと思うが」
「とぼけないで下さい、先日私を襲った盗賊達も貴方達の仲間でしょう」
タイカは首を傾げた。
「それは全く見当違いだぜ姫様、俺はあんたをルエンに生かして連れてく為に来たんだよ」
想定していた答えと真逆の言葉にウヤクは言葉を失った。
「どういう事」
戸惑うウヤクの姿にタイカの口角は更に上がった。
「何も知らないみてぇだな、あんたはもうコクヨウにとって用済みなんだよ。恐らく盗賊とやらもコクヨウに雇われてたんじゃねぇか」
コクヨウとはウヤクの祖国の名だ。
「そんなはずは、、、一体何が起こってるの!」
「まぁ、四百年も森に幽閉されてりゃ知らねえのも当然だわな。いいぜ教えてやる」
タイカはウヤクと距離を詰めた。
「あんたが生み出した不死の兵隊三千人。本来主であるあんたが死ねば全員死体に戻るとこだが、うちの国で掴んだ情報じゃ、コクヨウでそれを覆す魂操術が出来ちまったらしいぜ」
「そんな、、、彼らの為に私は、、、」
「なんでも魂操術の主をすげ替える事が出来るんだと、だからあんたが死んでも誰かが引き継ぐからなんも問題なしって事だ。むしろ兵隊使うのを躊躇ってるあんたにはさっさと死んでもらった方が良いと思ってる奴もコクヨウには多いだろうな」
ウヤクには返す言葉を探す気力は無かった。その場でへたり込み大きな雫を地面に落とした。熱された地面は落とされた雫を数瞬と待たず蒸散させてしまう。その光景がウヤクの惨めさを更に掻き立てた。
「まぁそんなに落ち込むなよ、今すぐルエンに来ればこんな生活ともおさらばだぜ」
「ルエンは私を匿って何をするつもりなの」
「さっき言った主をすげ替えるって術はすぐに出来るわけじゃない、元の主が死んでから二日間は術を受けた個体は動く事ができないんだと。要するにあんたが死んでから二日間は不死の兵隊どもは動かなくなるって事」
「まさかその二日を、、、」
「そういう事。ルエンで匿ったあんたをこっちのタイミングで殺して、そこから不死の兵隊が動かない二日間でルエンはコクヨウに戦争を仕掛ける」
「なんて卑怯な」
「卑怯なのはそっちだろうが!お前のせいでどんだけの人間が死んだと思ってんだ。知らぬ存ぜぬじゃ済まされないぜ姫様よ」
「、、、」
ウヤクは何も言い返すことは無かった。
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