第十一話 その実力、まさかのマスターレベル
エルフの
(じゃ、あとはよろしく)
(は? 何言うとんねん)
どうやら咲季は、ビトーへの説明その他うんぬんを、この猫一匹にすべて丸投げするつもりらしい。
(ちょ待てや、サキ。それくらい、自分でやったらええやないか?)
(お願い、カッシュ! 私、知らない
(って、マジかい……)
必死な表情で懇願する咲季を、あきれた様子で見つめるカッシュ。彼女と知り合ってからまだほんのちょっとしか経っていないが、才色兼備を絵に描いたようなこの完璧美少女が、ここまで人見知りとは正直信じられなかった。だが咲季にしてみれば、これでもかなり頑張ったほうなのである。
(……しゃあないなあ)
カッシュは軽くため息をつくと、咲季の肩の上に乗り、意を決してビトーに話しかけた。
「あー、ワイらはとある
「そうだったんですか……。それは、本当に助かりました。ありがとうございます!」
カッシュの話を真剣に聞いていたビトーは、素直に感謝の意を述べた。実際に彼は、咲季の放った
「こんお
(
カッシュのこの言葉に、咲季は思わず声を上げそうになった。
(こういうのはな、ちょいと
「……あ、あのう、なにか?」
ひそひそ声で話し合う猫と少女の様子を、不安そうに見つめるビトー。カッシュは
「あー、気にせんでええ。あんまりしゃべりたがらへん
それにしても、ペラペラとよくしゃべる猫である。だが咲季にとってみれば、
「それからワイは、サキエル様の『使い魔』のカッシュっちゅーモンや。ワイもこう見えて、めっちゃ高レベルの
「はあ」
「ちゃんと
「はい、しょ、承知しました!」
カッシュがめっちゃ高レベルの
「あ、あの、サキエル様、カッシュ様! ぼくの村、ホッタンの村って言うんですけど、ぜひお越しになってください! ちゃんと村長とかみんなに話して、お礼もさせていただきたいですし」
カッシュは、ビトーの「お礼」という言葉に敏感に反応した。
「ん、礼ってなに? カネ? メシ? 和菓子?」
咲季はカッシュの口を右手でふさぎながら、せいいっぱい絞り出した微笑みとともに静かにうなずいた。
「では、せっかくだから立ち寄らせていただくわ」
「で、『マドゥル』ってなんなん?」
咲季とカッシュは、ビトーが乗ってきた農作業用の馬車の後ろに乗せてもらい、ホッタンの村へと向かっていた。その道すがら、咲季の膝の上でくつろいでいたカッシュは、彼女がオークの
「んー、『マドラガダラの
そう言いながら咲季は、
「……ふーん。ま、たしかにそのままやと、ちょいと
そう言ってケラケラ笑うカッシュを、咲季は冷めた目で見つめた。
「ていうか、さっきの『使い魔』ってなによ。いつの間に、そういうことになったわけ?」
「ああ、アレな。そういうことにしとかんと、ワイまで
「そうなんだ」
たしかに、関西弁を話す猫などそれだけで怪しい存在ではある。今後、人見知りな咲季に代わって
「これからも、ワイらは一緒に旅を続けるんやし。いらん疑いかけられて、人間たちから危害を加えられたらかなわんさかいな。不本意やけど、まあしゃーない」
そう言いながらカッシュは、腕を組んだ。脳天気そうに見えて、意外にちゃんと考えている猫である。
「ありがとね、カッシュ」
咲季は、カッシュの頭を優しくなでた。
「かまへんで、
そんなカッシュも、まんざらでもないといった表情ではある。
「あ、見えてきました。あれがホッタンの村です!」
二人のほうを振り向きながら、ビトーが言った。
続く
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