真っ赤な嘘

コトリノトリ

第1話 愛ゆえお先は明明

彼女に出会ったのは、アルバイトの面接を受けに行った日。

「あの、面接予定の、、、」

そう話しかけたのが彼女だった。

「あ、そういえば!今日面接だったね!ちょっと待ってて〜」

そう言ってバックヤードに駆け出す彼女を見て、心が浮き足立つのを感じた。

走ると綺麗にたなびく黒く長い髪。マスク越しでもわかる満面の笑顔。

心を奪われるのにそう時間はかからなかった。

僕が彼女に心を奪われてるのは、バイト先の人にとっては周知の事実。

よくくるお客さんが冷やかしてくるほど、僕はとてもわかりやすかった。

彼女と目が合えばすぐに目を逸らし、笑いかけられれば真っ赤になり、話かけられたら言葉が詰まる。

こんなのわからない方がおかしい。

でも、彼女は気づいてないみたいで、僕に普通に気軽に接してくる。

恋が叶ってほしいとは思ってなかった。

こんな素敵な人だから、きっと彼氏がいるだろうし。そんな噂も聞くし。

ただ遠くから見つめていたいだなんて、そう思っていた。

だから、急にLINEを聞かれたときは驚いた。

「今度の忘年会の幹事になって。そういえば、君のLINE知らないなと思ってね。」

あ、そういうことか。期待した自分が馬鹿みたいだ。

「いいですよ」

なんてカッコつけて、頑張って、嬉しいのを隠してスマホを出す。

そのLINEを使う日は一生こないと思ってたのに。

ピロンと音ともに、画面に映し出される彼女の名前。

『ほんとに?嘘ついてないよね(゚∀゚)』

ほんとですよなんて打ち返そうとして、空を見上げる。

彼女は今頃何をしてるだろうか。

打ちかけた文字を全部消していく。

もうこの気持ちに嘘はつけない。

僕の名前を突然呼んで、からかうようなその笑顔にどれだけ心を掴まれたか。

僕を見つけて笑顔になるあなたにどれだけ、心が躍ったか。

もう隠せそうにないから。

『今から会えませんか?』

返信は少し遅れて。

『いいよ』

たった3文字だった。

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