第565話
球場の外―――。
制服に着替え終わった陸雄達は香月高校野球部のバス前に来ていた。
相手の監督に陸雄が話す。
「あの―――相手の三番は?」
香月高校の監督が答える。
「さっき連絡があって、病院で入院することになったそうだ。夕方には診察が終わって、病室で安静にと連絡もあった」
「そんな―――俺のせいで…………」
陸雄が落ち込むとハインが陸雄の肩に手を置く。
「落ち着けリクオ。デッドボールはプロの試合でも見かけられる。選手生命が無くなることもあるが、三岳は生きている。死んだわけじゃない」
その間に中野監督と香月高校の監督が話し合う。
三岳の入院先を聞いているようだ。
そのやり取りの横で千羽鶴を坂崎が佐伯から受け取る。
佐伯が坂崎に声をかける。
「三岳さんのことで納得できない部分があるけど、アンタらは俺達に勝った―――現状でベスト8になったんだ。負けないでくださいよ」
「う、うん―――僕たち頑張るよ」
坂崎が千羽鶴を持って、答える。
「三岳さん、一生入院ってことはないよな?」
陸雄がメンバーに話すと古川が答える。
「まだそうと決まった訳じゃないよ! そんな簡単に―――当たり前のように死んでいくんなんて―――」
古川マネージャーが唇を少し噛んで怒りと悲しみの入り混じった顔をする。
その様子を見て、冷静になった陸雄が気にかかる。
(当てたのは俺だけど、一番怖がるのは俺なのに―――どうしてこの人は―――こんなにもデッドボールを気にするんだろう?)
香月高校の監督が陸雄に話す。
「岸田君だったかな? 三岳は元々肩を少し痛めていてな。ケガがあったら退部させる予定だった。選手生命に関わることだからな。今回の事で選手復帰はほぼ無理になった。命に別状はない」
「選手として? そんな―――俺の……せい、で……」
陸雄が俯く。
相手校の監督が気を遣って、話していく。
「君のせいじゃない。キャプテンの三岳はそんなことを責めるような奴じゃあないから、夕方でも良いからお見舞いに行って、くれないか? 話してみれば君も迷いがなくなるよ」
中野監督が陸雄の肩を軽く叩いて、声をかける。
「そうだな。岸田―――今日の夕方に一度家に帰って、私が車で迎えに行くからお見舞いに行ってこい」
「中野監督……わかりました……」
「―――反省練習はその後でいい。どのみち今日は雨で練習グラウンドも使えないだろう。紫崎と松渡も病院に同行しろ。私と古川も行く」
中野監督がそう言って、香月高校の監督から三岳の面会の為の情報を聞く。
聞き終えた後に香月高校の野球部はバスに乗っていく。
「今日は学校に戻ったら、そのまま帰宅しろ。岸田と紫崎に松渡は家に戻って、私のインプレッサで古川と一緒に病院まで行くぞ」
そう言った後にバスに乗るように指示され―――。
大森高校のメンバーは勝利を祝えずに黙り込んでバスに乗った。
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